疎外された若者を結集する「イスラム国」  空爆と資金規制だけでは根絶の日は遠い

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テロ集団ながら豊富な資金力を持ち、不満を持つ若者を欧米からもリクルートして膨張(ロイター/アフロ)

イスラム国(IS)は、2014年6月、イラク第2の都市モスルを陥落させ、急速にイラク、シリアに勢力範囲を広げた。イラクの首都バグダッドやクルド人自治区に脅威が迫り、8月に米国は重い腰を上げて、IS阻止へ空爆を実施した。空爆にはイギリス、フランス、サウジアラビア、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)の有志連合国も加わる。8月から、国連安全保障理事会は続けてIS制裁を決議するが、ISの脅威は続いている。

イスラム過激派と呼ばれるISだが、サラフィー主義(復古主義)に基づく、ジハード(聖戦)運動である。「サラフィー・ジハード主義」という用語は最近生まれたもの。

預言者ムハンマドの時代に復古して、イスラム法の厳格な適用とジハードにより、ウンマ(イスラム教徒の共同体)を再編、欧米帝国主義とシオニズム(イスラエル)によって分断されたイスラム世界を、あるべき姿に戻す。それがモロッコからアラビア半島に至る「カリフ国」だとする。

しかし、これは大義名分にすぎない。高岡豊・中東調査会上席研究員は、「ISは支配下に置いた地域の統治を考えていない。イナゴの大群のように移動しながら殺人、誘拐、略奪などを繰り返す運動体」と実態を指摘する。

ISはシリア内戦に加え、イラクが宗派・民族融合に失敗したすきを突いて、勢力を拡大した。「シリア内戦で欧米諸国やトルコ、産油国が、反アサドなら素性を問わないという支援をした結果、ISに大量の武器や資金が渡ることになった」(高岡氏)。

世界で最も富裕なテロ組織の資金源

ISは米国務省から、「世界で最も富裕な国際テロ組織」と呼ばれる。資金源として、支配下に置いた油田や製油所からの石油収入、誘拐した住民の身の代金、略奪や臨時税、密輸、さらに富裕な産油国のNGOやイスラム福祉基金からの寄付金がある。

このうち安定した資金源はサウジアラビアを筆頭とするペルシャ湾岸の富裕な君主国からの寄付金だ。これらの君主国はどれも親米国で国際社会と協調している。それがなぜ、ISに寄付をするのか。

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