疎外された若者を結集する「イスラム国」  空爆と資金規制だけでは根絶の日は遠い

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こうした君主国は君主制を維持するために四方に気配りをする。その一つがISに代表されるサラフィー・ジハード主義者への寄付。彼らが君主国に刃を向けるより、海外で暴れてくれたほうが好都合なのだ。こうした“みかじめ料”のような寄付金は、年間1億~2億ドルとみられる。

シリア、イラクでISが勢力範囲を広げてから、石油収入も膨らんでいる。米国務省は年7億ドル程度と推測する。

しかし、この推測については、「石油販売量と油価の掛け算から割り出した数字で、操業の安定性と販売先のトルコの業者から市場価格の半値で買いたたかれていることを考えると、過大な見積もり」(高岡氏)だという。しかし、略奪、身の代金、密輸などを合計すると、年10億ドルに近い資金を得ていると推定できる。臨時収入が大半とはいえ、現段階では世界で最も富裕な国際テロ組織である。

SNSを駆使し外国から若者たちを引き寄せる

ISは復古主義を掲げながら、インターネット、SNS、国際金融技術を活用している。戦闘員も外国からの参加者が目立つ。

3000人を送り出すチュニジアは、11年にベン・アリ政権を倒した「アラブの春」以降も続く政情不安をうかがわせる。次いで参加者が多いサウジアラビアは、君主制にとって潜在的な脅威になるサラフィー・ジハード主義者の厄介払いのため、送り込んでいる。

欧州ではイギリス、フランスが目立つ。大多数は移民したイスラム教徒の2世、3世たち。彼らは英仏に生まれて、国籍、市民権を持つが、社会に完全には受け入れられず、将来の展望も描けない、という不満を持っている。

ISに共感し、SNS拡散者のサイトにアクセスする、現状に不満を抱く若者たち。彼らを選び、「道案内」する仲介者が、トルコを経て、シリアにいるISを構成する各グループに送り込む、という段取りである。

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