疎外された若者を結集する「イスラム国」  空爆と資金規制だけでは根絶の日は遠い

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アサド打倒か、イスラム国打倒か

今後、封じ込めに国際社会は、どう動くべきか。欧米はIS攻撃に地上軍を送らないことを決めている。

高岡氏は「極論だが」と前置きしながら、「いちばん効果があるのは、シリア・アサド政権と和解して、ISに当たること。アサド政権の統治能力は高く、イラク政府軍より頼りになる。アサド政権を支援しているロシア、イランを包囲網に参加させることもできる」。が、この毒をもって毒を制す政策は、サウジアラビアなどが反対するため、実現しそうにない。

次にカギを握るのが、トルコだ。トルコのAKP(公正発展党)政権は、アサド政権打倒をIS封じ込めより優先している。トルコからシリア領内のISに武器、資金、戦闘員が「ほぼ全部」(高岡氏)という規模で流れる。「トルコが本気で流れを止めれば、事態は変わる」(同)。トルコの政策転換には、国際社会の強烈な圧力が必要だ。

残された政策は現行のものである。限定的な空爆と資金規制を中心に制裁を強化し、時間を稼ぎながら、イラク政府軍やクルド人武装勢力を育てることだ。だが、それだけでは、IS根絶の日は遠い。

(「週刊東洋経済」2014年11月8日号<11月4日発売>掲載の「核心レポート04」を転載)

内田 通夫 フリージャーナリスト

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うちだ みちお / Michio Uchida

早稲田大学商学部卒。東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』の記者、編集者を歴任。

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