池上彰が読み解く「イスラム国の真の姿」 「過激テロ国家」という認識は思い込み?!
米国のノーム・チョムスキーの版元として知られるセブン・ストーリーズ・プレスは、いわゆるビッグ5と呼ばれる大手出版社が、非アメリカ的として出さないような問題作を出し続ける特異な存在。そのセブン・ストーリズ・プレスが先月出版をし、話題になっている1冊の本がある。
著者はイタリア人の女性エコノミストのロレッタ・ナポリオーニ氏。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで哲学修士号を取得した彼女が一躍有名になったのは、テロ組織のファイナンスを専門とした2005年の著作『Terror incorporated:tracing the dollars behind the terror networks』からだ。パレスチナ解放機構(PLO)やアイルランド共和国軍(IRA)などを分析してきた彼女がいち早く注目していたのが「イスラム国」だった。
これについてまとめた本が、日本でも文藝春秋から1月7日に発売になる『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』。「イスラム国」とイスラエル建国と比較するなど、「イスラム国」を単なる武装組織としてとらえてきたこれまでの報道とはまったく違うユニークな切り口の本となっている。
この本によれば、「イスラム国」のリーダー、バグダディはアルカイダの失敗を、米国という「あまりに遠い敵」に第二戦線を開いたこと考え、ジハードに「建国」の意味を初めて持ち込んだのだという。領土をとり、石油を確保し、経済的に自立。支配地域には、電気をひき、食糧配給所を設け、幼児に対する予防接種まで行う。その最終目標は、英仏によってひかれた中東の国境線をひきなおし、失われた真のイスラム国家を建設することだという。
その話題の書を、自らも中東を長年取材してきた池上彰氏が解説、その全文を掲載する。
この本によれば、「イスラム国」のリーダー、バグダディはアルカイダの失敗を、米国という「あまりに遠い敵」に第二戦線を開いたこと考え、ジハードに「建国」の意味を初めて持ち込んだのだという。領土をとり、石油を確保し、経済的に自立。支配地域には、電気をひき、食糧配給所を設け、幼児に対する予防接種まで行う。その最終目標は、英仏によってひかれた中東の国境線をひきなおし、失われた真のイスラム国家を建設することだという。
その話題の書を、自らも中東を長年取材してきた池上彰氏が解説、その全文を掲載する。
(編集部)
「過激テロ国家」は思い込みなのか
日本国内では、北海道大学の学生が「就職活動に失敗したから」という理由で参加しようとして注目を浴びた「イスラム国」。世界各地から多くの若者を引き付ける磁力を持った組織が、日本の若者たちをも誘引しようとしていたことは、衝撃を持って受け止められました。
2014年12月に公表された警察庁の「治安の回顧と展望」は、北大生のような若者が出たことについて、「今後も参加を企図する者が出てくる可能性は否定できない」と警戒感を表明しています。
リーマン・ショック以降、世界各地が陥った不況と、それに続くEUのユーロ危機は、世界各地で閉塞感を強めています。そんな現状を打ち破ってくれそうな新たな希望の星。先進国の一部の若者たちにとって、それが「イスラム国」という存在なのでしょう。
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