セットなら「重箱に盛りつけてあるおせち」がおすすめ
河岸:個別の1品については、さっき説明したとおり。どうしても「おせちセット」を買うというなら、まだ「事前に重箱に盛りつけてあるおせち」がおすすめかな。
N君:確かに、市販のおせちには、「重箱に盛りつけてあるもの」と「自分で真空パックから出して盛りつけるもの」の2種類ありますね。
河岸:自分で真空パックから盛りつけても、おいしそうにはできないでしょ。本当は、タケノコの土佐煮なんかは、凍結ものより真空パックでレトルト殺菌処理されたもののほうがおいしいんだけどね。
N君:確かにおせち料理だし、「見た目」も大事な要素ですよね。
河岸:いまは冷凍技術が進化して、マイナス40度以下で一気に凍結できる技術もある。だから、重箱に盛りつけて一気に凍結し保管されたおせちは、冷凍品でも比較的おいしい。
N君:なるほど、冷凍の仕方によって、味がまったく変わってくるわけですね。
河岸:今回、「冷凍おせちは味がガタ落ちしたものが多い」と書いたけど、その原因は冷凍自体にあるというより、本当は「冷凍の仕方」「解凍の仕方」に問題があることが多い。「きちんと凍結」して「きちんと解凍」すればおいしいんだけど、実際は、専用の機械を使用せずに「緩慢凍結」して、かつ適当に解凍したものが多いから。だから、かまぼこにしろ伊達巻にしろ、冷凍品は味が損なわれてしまっているんだ。
N君:「どう凍結して、どう解凍した」かは消費者には見分けがつきませんよね。だから、できることなら売り場の人に聞いて、凍結されていないものを買うのがベストですね。
河岸:「高い冷凍品」より「安い冷凍されていないもの」のほうが総じておいしいからね。予約のときに、店の人に聞くことだね。レストランや料亭の中には、普段の営業を何日か休んでおせち料理の仕込みにあて、きちんと全部手作りしているところもある。もちろん、そういう店のおせちはいい値段で、最低でも1段あたり1万円、3段セットで3万円はする店が多いけどね。
N君:さすがに、そういうおせちは高いですよね……。
河岸:だから、やっぱり、おせちを「買う」という発想自体が、本当はおかしいと思うけどね。本来、おせちはその家、その郷土に伝わった味があって、新年を祝うためにこしらえる特別料理でしょう。自分で作らなかったら、おせちのおいしさなんてわかるはずがない。いつから日本人はおせちを「買う」のが当たり前になってしまったんだろう。
N君:そういえば実家では、母親が年末に2~3日かけて作ってました。
河岸:もちろんそれが理想。でも最近はみんな忙しいだろうし、すべてをいちから手作りするのは難しいかもしれない。ただ、「エビくらい買ってきて自分で焼こうよ」というのが私の言いたいこと。時間がないなら、冷凍しても味が落ちにくい「田作り」「黒豆」「ハム」は買ってきてもいいし。
N君:なるほど……。市販品も上手に取り入れながら、無理のない範囲でおせちを手作りしてみるという提案ですね。ぜひこの記事を参考に、今年はおいしいおせちを食べて、いい1年を始めましょう!
というわけで、「おせち料理」の裏側は以上になります。
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かわぎし ひろかず / Hirokazu Kawagishi
食のプロや業界関係者のあいだで「食品業界を知り尽くした」と言われる男。大手ハムメーカー、大手卵メーカー、大手スーパー&コンビニ、数々の食品工場での勤務経験から「肉のプロ」「卵のプロ」「スーパー・コンビニのプロ」とも呼ばれる。
1958年、北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、「農場から食卓まで」の品質管理を実践中。「食品安全教育研究所」代表。
これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハム・ソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け惣菜工場、卵加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。
著書に『スーパーの裏側』(東洋経済新報社)、『ビジュアル図解 食品工場のしくみ』(同文舘出版)などがある。
ホームページ「食品工場の工場長の仕事とは」を主宰。
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