日本人には「一党支配体制」が心地いい? 2度の選挙で昔の状態に後退した懸念

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米国の日本専門家に選挙結果の分析結果を尋ねるシリーズ。最終回は、マイケル・オースリン氏へのインタビューをお届けしたい。

同氏は、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所 (AEI) 日本研究部の専任研究員および研究部長を務めており、アジア地域の安全保障および政治問題を専門としている。AEIに加わる前には、イェール大学歴史学部准教授を務めていた。

ウォール・ストリート・ジャーナルのアジア面のコラムニストを隔週で担当しており、著書に『太平洋国際人 – 日米関係の文化史』(ハーバード大学プレス,2011)がある。これまでに様々な賞を受賞しており、中でも世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーや、ドイツ・マーシャル基金のマーシャル・メモリアル・フェロー、フルブライト・フェローなどに選ばれている。

計画を持つ唯一の人間であることを証明した

――安倍政権が選挙を行うことで得た利益とは何でしょうか。

自分こそが日本で物事を進めるペースや勢いを決定できる唯一の人物だ、という雰囲気を作ることができました。それが選挙で得たものです。もし選挙に打って出ず、悪いニュースが続き、国民からの支持率が下がり続けたのなら、安倍首相は最近の他の日本の首相と同じような顔つきとなって、何もできないまま、支持率が低下していくのを見届けることになったでしょう。

安倍首相は、劇的に路線を変更しようとはしたわけではありません。選挙とは政治そのものであり、これによって自分が日本における、計画を持つ唯一の人間(the only person in Japan with a plan)だと、再度証明して見せました。安倍首相は、他の首相が長く得てきた印象とは異なり、揺らぎのない印象を与えることに成功しました。

弱みがあるとすれば、有権者の半数しか投票しなかったことです。選挙結果は本当の民意を表しているわけではない、というストーリーが定着すれば、苦しくなるでしょう。

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