【産業天気図・銀行業】債券売却益、与信費用低下の“恩恵”は一巡、貸し出し不調で景況感は「曇り」へ

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

銀行業界の景況感は、2011年9月まで終始「曇り」止まりだろう。メガバンク各社の足元業績は決して悪くないが、資金需要がいっこうに盛り上がらず、貸出残高の減少が続く。さらなる金利の低下も期待できず、企業の資金需要が拡大する要素は極めて少ない中、今後の業績は頭打ちか後退が懸念される。

3メガバンクグループの10年9月期中間決算は利益が急増した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は純利益が前年同期比で約2.5倍の3567億円、みずほフィナンシャルグループは同約3.9倍の3417億円、三井住友フィナンシャルグループは税負担が軽かった分もあり、同3.3倍の4174億円となった。

好決算の要因はどの銀行でも共通している。ひとつは収益要因で上期の金利低下局面をとらえて債券(主に国債)の売却益が大きくなったこと。また、コスト要因で与信費用が当初見ていたよりも大幅に少なく済んだというダブルの要因で利益が大幅に増えた。
 
 大増益要因が同じなら、「相当慎重に見ている」(MUFGの永易克典社長)という下期の見方も各社同じだ。まず、この低金利状態からさらなる金利の低下局面は考えにくく、利益に大貢献した債券売却益を上期と同様に見込めない。景気に対する不透明感が強まる中、与信費用の抑制が続くという楽観的な見通しも立てにくい。結果、上期よりも債券利益は減少し、与信費用を多めにみることで「慎重」な見通しとなる。

上期の好決算を手放しには喜べず、むしろ悩ましいのは資金需要がいっこうに盛り上がらないという実態だ。大手企業を中心に貸出残高の減少が続くうえ、低金利のために利ザヤもとりにくい。実際、上期にどこのメガバンクグループでも貸し出しから得られる収益が含まれる資金利益が減少した。11月8日の全国銀行協会の発表によると、全国銀行の貸出金は前年同月末比で12カ月連続減少。下期の与信費用見通しはどこも保守的なきらいがあるが、上期の利益水準から低下するのは避けられない。

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