【産業天気図・銀行業】債券売却益、与信費用低下の“恩恵”は一巡、貸し出し不調で景況感は「曇り」へ
11年度に入っても景気回復から企業の資金需要がにわかに好転するシナリオは考えにくい。むしろ足踏みが続きそうだ。現在、企業の下支えとなっている中小企業円滑化法(09年12月施行)は11年3月で期限切れとなるが、「延長を視野に検討していく」(自見庄三郎金融担当相)と前向き。とはいえ、景気停滞が長引くようだと貸し出し先の業容悪化から銀行側には与信費用増加という懸念がつきまとう。
企業向けが厳しい一方、個人向けの住宅ローンは業界全体でも残高増が続く。しかし、どの銀行もここの取り込みに力を入れる余り、金利競争がいっそう熾烈化しており、ローン契約が増えても思うように利益増にはつながっていないようだ。また、10年上期の低金利を追い風に実現した債券売却益を見込むのは難しく、前年同期比では利益が減少する可能性が高い。
メガバンクは10年度上期に債券売却益を多く計上したが、地方銀行は含み益抱えたまま売らずに保有し続けているところもあり、利益の出し方は対応が分かれている。ただ、貸し出しが不調なのは中小企業向けを主体とする地方銀行も同じ。資金利益が苦戦を強いられる中、保険や投信販売の拡大などで役務利益(手数料収入)の増加に活路を見出そうというところが多い。
大手では国内に止まらず海外事業の拡大に力を入れており、MUFGは英国銀行大手RBSからプロジェクト融資事業のローン資産38億ポンドの取得で合意。みずほは業務提携も視野に入れて資産運用世界最大手の米ブラックロックへ5億ドル出資した。一方、地銀は資金需要が低迷する中、余資を運用するにも低金利の影響で利息収入を上げにくいという厳しい環境に置かれている。
(井下 健悟=東洋経済オンライン)
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