【産業天気図・重電】世界経済の減速懸念と円高が回復の勢いそぐ、景況感は「曇り」止まり
10年10月~11年3月 | 11年4月~9月 |
重電大手の景況感は、2011年9月まで「曇り」が続く見通し。世界経済の減速懸念と歴史的な円高水準が下押しリスクとなり、各社とも業況を慎重に見ている。10年度後半は前半の利益水準を若干割り込む可能性が高い。ただし、業況は大きく悪化するわけではなく、利益はほぼ横ばい線で推移する見通し。11年度前半にかけては若干の増益も見込め、晴れ間がのぞく展開となる余地がある。
10年度前半はエレクトロニクス関連の需要回復が全般に進んだこと、アジアを中心とした設備投資需要の拡大から、日立製作所、東芝、三菱電機の大手3社は、ともに想定以上の好業績を記録した。
日立製作所は自動車やエレクトロニクス関連の需要回復が進んだことや、前期に実施した構造改革の効果などから、11部門すべての損益が改善。赤字事業もなくなり、上期(10年4~9月期)業績は、20年ぶりに過去最高純益を更新した。
日立化成工業、日立金属、日立電線によって構成される「高機能材料」や半導体製造装置などの「電子装置・システム」、ハードディスクドライブを手がける「コンポーネント・デバイス」の3部門を筆頭に、自動車部品、建設機械などが利益改善を牽引した格好だ。上期の好業績を背景に、日立は通期予想を上方修正している。営業外の構造改革費用が減少しつつあることや、上場子会社の取り込みを実施するなど「非支配持分帰属利益」の流出を減らす施策を進めていることから、通期でも純益は過去最高水準に迫る公算。
しかし、順風満帆だった上期に対し、10年度後半以降はやや風向きが厳しくなりそうだ。政府の景気対策効果が一巡することや為替円高などから、特に上期利益を牽引した高機能材料やハードディスクなどの量産系事業に先行き不透明感が強まっているからだ。