富豪ロシア人学生のアイデアが世界を変える? 想像を現実にする、「専門家チーム」の方法

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友人と一緒に行った学会のための国外滞在中、会場となった大学での記念撮影

サイトはたいへんよくできていて、情報共有ページから議論を行うページ、通常のSNS機能まで備えていた。次は大学の了解を取り付けケンブリッジ大学の生徒に広めて、その後は世界中に広めていくと言う。明らかに学会に行く以上の時間と労力を使っているが、彼の目はその先に起こる社会の変化を見ていた。ここまでくると、単なる面倒くさがりの戯言ではなくなる。

指導教官の説教から生まれた彼の何気ないアイデアは、さまざまな背景を持つ人々に共有され、共感した人たちがそれぞれの強みを生かすことで形になっていった。多分野のスペシャリストの存在とそれらをつなぐ人的ネットワーク、これらが社会に変化をもたらす“The power of idea”の源流なのだろう。

こんな土壌の中、ケンブリッジでは企業や団体設立が行われやすい。研究室の同期は、4人のうち3人が研究を行いながら何らかの組織を在学中に設立している(私もそうだ)。

課題解決の5つの段階

課題解決の力は次の5つの段階に分けられると、私は考えている。

 ① 課題を知らない
 ② 課題を知っている
 ③ 解決に取り組んだ経験がある
 ④ 課題解決が可能になる
 ⑤ それが社会から認められる

それぞれのステップには大きな隔たりがあるが、博士課程では主に自分の専門分野に関して5つ目の段階に到達することが求められる。

ケンブリッジの学生生活では、専門の研究・学業以外に社会と結び付く活動が自然と行われているため、社会の中で自分がどの段階にいるのか、またその中でどのような役割を担うのかを知ることができる。たとえば、先ほどのロシア人の友人は、研究者・学生の中に同じような課題意識を持っている人がいることを知り(多少、彼の主観が入っているが)、その課題解決に取り組んだ。

自分とは何者なのか? どういう存在か?

彼らの活動から課題が解決されるか、社会から認められるかは結果を待たなければならないが、発案者となったロシア人の友人は、その事業のうえでは全体像を描くプロデューサーであり、今後の方向性を決める役割を担っている。そして、彼の友人のコンピュータサイエンスの専門家、デザインの専門家は、アイデアを形にし、人と結び付ける実務上の役割を担う。

専門外のことをすると、あまり日常で感じることのない無力感や、社会から見た己の小ささを感じることがある。しかし、学生の間にそれと向き合うことで、社会における自分の立場や役割を痛感することができる。

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