吉野家社長「牛丼値上げのすべてを話そう」 独占インタビューでわかった値上げの舞台裏
――400円はハードルが高いということですか。
商品にかける思いとして、個人的には(牛丼並盛で)500円以上の価値があるものを提供しているという自負はある。だが、消費者は絶対額の安さも求めている。以前は400円で売っていたとはいえ、一度280円に価格を下げているわけだから、非常に割高感を感じさせてしまう。
400円で販売していた時期より、人件費や水光熱費は上がっている。店の家賃も高くなった。すべてのコストが上がっているが、400円は消費者の理解が得られないと思った。11月末の時点で牛丼並盛は380円ということで決めた。
鍋の好調で在庫の減少が早まった
――河村社長は10月の決算会見で今期中、つまり2015年2月末まで牛肉の在庫はストックしていると話していた。となると、値上げは来年の春頃が妥当なのではないでしょうか。
今、値上げに踏み切る一番の理由は、10月末に発売した牛すき鍋膳が非常に好評いただいているということ。鍋では牛丼と同じショートプレート(牛バラ肉)を使っている。鍋は牛丼よりも使用する肉の量が多い。鍋の好調もあり、11月の既存店売上高は前年同月比で2割増となった。12月の出足も好調に推移している。結果的に、想定よりも肉の在庫減が早まった。
足元の牛肉価格高騰は一時的ではない。しばらく辛抱していれば相場が下がってくるという性質のものではない。それがわかった時点で、速やかに上げるべきと判断した。そして、もっと値打ちのある商品を開発する、サービスを開発するという方向にフォーカスしていきたかった。この夏以降は社内的にも値上げ問題が大きな経営課題になっていて、これ以外のことが考えられないぐらいの状況になっていた。
――すき家や松屋といったライバル勢の価格も意識した改定なのでしょうか。
これは他社に限らない。コンビニの弁当もおいしくなっている。それは脅威だ。同業他社だけでなく、同じ価格帯で食を提供しているところは全部気になる。
――4月の値上げの時は肉質やタレの品質向上を狙った値上げでした。
前回の値上げは僕たちが自信を持って、10円以上の価値が上げることができた。熟成肉に切り替え、タレの成分を変えたことで、僕自身も「絶対にいいもの」だと思った。
ただ今回、100円分の値打ちを上げて価格を80円上げるというのは、時間的にも難しかった。いちばん取り組みやすいのは量を増やすこと。たとえば、並盛の肉を1.5倍にして値段を400円にしますと言っても、もはや日本の平均年齢46歳という高齢化社会をむかえている。今の消費者は決してそれを望んでいるわけではない。
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