吉野家社長「牛丼値上げのすべてを話そう」 独占インタビューでわかった値上げの舞台裏
他社のようにみそ汁を無料でつけるという案も議論に乗った。ただ、それで並盛80円値上げの根拠にはならない。正直に、こういう相場だから、今のクオリティを守るので、消費者に(値上げに関して)ご理解をいただくべく努力するしかないと思った。変にごまかすようなことはしたくなかった。順序は逆になってしまうけど、さらに牛丼の価値を上げていくという取り組みは力を入れてやっていきたい。
FCへの卸価格は3カ月据え置く
――値上げによる客数や売り上げへの影響は、どう見ていますか。
値下げは店舗で実験できるが、値上げの実験はやりにくい。過去に一部の地域で値上げしたことはあるので、そのデータを使ってシミュレーションを繰り返した。
実例でいうと、以前販売していた牛鍋丼を280円から300円に値上げするテストをしたことがある。そういうデータを使って机上の試算をした。7月に一部地域で値上げの検証をすべきじゃないかとも考えたが、どう考えてもお客様の理解を得られない。われわれは実証主義だからやってみようとは考えたが、踏み切れなかった。
だから、具体的にどうなるという予測は申し上げにくい。これは価格を下げた場合も同じだが、価格改定をした場合、最初の3カ月の影響が大きい。その後は緩やかになる。今回も最初の3カ月は厳しくなるだろうとみている。
われわれには現在、93のFC店舗が存在する。2015年3月まではFCへの食材卸価格は上げないということを決めた。これは初動の3カ月の影響を考えたもので、ある種のFC支援のようなものだ。
――今回の価格改定で耐えられる牛肉相場の水準は?
ショートプレートで1キログラム1500円を超えると耐えられない。これ以上、牛肉の相場が上がっていくということは、需要を冷やすことになる。今の水準で頭打ちじゃないかと思いたい。
――今回の値上げで客足が遠のく可能性は高い。どのように巻き返しを図るのですか。
今、考えているのは新しい牛丼の食べ方を提案するということ。食べ方というのは牛丼を変えるのではなく、お店のあり方を見直すことだ。
基本的に吉野家はカウンターで食べるのが主流。だが、過去にはカフェのようなお店を検討したこともある。吉野家ホールディングス傘下のうどん店「はなまる」のようなセルフセレクションという形も、一部のお客様にとっては快適かもしれない。そういう実験はこれまでもやっているが、年明け以降、加速していきたい。
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