吉野家社長「牛丼値上げのすべてを話そう」 独占インタビューでわかった値上げの舞台裏
値上げに動き始めたのは8月
――値上げを意識したのはいつ頃からでしょうか。
並盛価格を280円から300円に値上げすると発表した直後あたり。4~5月頃だった。商品部の会議で牛肉の相場について「現在、異常な状況である」という報告を受けた。今の価格では続けられないかもしれないということは、その時点で意識していた。
具体的に動き始めたのは8月。値上げ幅と時期はともかく、もう今の価格では維持できないと決断した。ごく限られた幹部たちには「価格改定する」という旨をその時点で伝えた。
――8月というと事業会社の社長は前任の安部修仁氏の時です。
5月には、安部に代わって私が9月1日付で吉野家の社長に就任する人事を発表していた。お盆明けぐらいからは、9月以降の事に関しては私が意思決定をしていた。安部が最後に意思決定したのは10月下旬に発売した「牛すき鍋膳」の販売日で、価格は僕が決めた。今回も「もう値上げします」と伝えると、安部は「もう今の価格は維持できないね」と答えた。
――今回、牛丼並盛で380円としましたが、社内ではどのような議論をしたのですか。
当初は350~400円のレンジで10円刻みのパターンで考えた。ただ、議論の初期段階で牛肉相場が瞬く間に上昇して350円、360円は早々に選択肢から外れた。仕入れ担当の幹部からは「400円を本格的に検討すべきでないか」という意見も出た。例年だと夏に相場が下がる。だが、今年は夏になっても市場が冷えてこなかったからだ。ただ、さすがに400円には踏み込めないと思った。
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