吉野家社長「牛丼値上げのすべてを話そう」 独占インタビューでわかった値上げの舞台裏

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12月9日の値上げ発表会見で険しい表情を見せる河村社長(撮影:梅谷秀司)
牛肉関連商品の値上げを発表した牛丼チェーン大手の吉野家。12月17日以降、牛丼並盛は300円(税込み、以下同)から380円となる。値上げの理由は牛肉価格の高騰だ。吉野家の社内では、夏頃から値上げに向けた具体的な議論が始まっていた。
今回の価格改定に至るまでの社内での議論、値上げに際して送った従業員へのメッセージ、前社長の安部修仁氏とのやりとり、今後の戦略――。9月に事業会社・吉野家の社長に就任した河村泰貴氏を直撃した。

値上げに動き始めたのは8月

――値上げを意識したのはいつ頃からでしょうか。

並盛価格を280円から300円に値上げすると発表した直後あたり。4~5月頃だった。商品部の会議で牛肉の相場について「現在、異常な状況である」という報告を受けた。今の価格では続けられないかもしれないということは、その時点で意識していた。

具体的に動き始めたのは8月。値上げ幅と時期はともかく、もう今の価格では維持できないと決断した。ごく限られた幹部たちには「価格改定する」という旨をその時点で伝えた。

――8月というと事業会社の社長は前任の安部修仁氏の時です。

5月には、安部に代わって私が9月1日付で吉野家の社長に就任する人事を発表していた。お盆明けぐらいからは、9月以降の事に関しては私が意思決定をしていた。安部が最後に意思決定したのは10月下旬に発売した「牛すき鍋膳」の販売日で、価格は僕が決めた。今回も「もう値上げします」と伝えると、安部は「もう今の価格は維持できないね」と答えた。

――今回、牛丼並盛で380円としましたが、社内ではどのような議論をしたのですか。

当初は350~400円のレンジで10円刻みのパターンで考えた。ただ、議論の初期段階で牛肉相場が瞬く間に上昇して350円、360円は早々に選択肢から外れた。仕入れ担当の幹部からは「400円を本格的に検討すべきでないか」という意見も出た。例年だと夏に相場が下がる。だが、今年は夏になっても市場が冷えてこなかったからだ。ただ、さすがに400円には踏み込めないと思った。

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