関空、「ようやく低迷脱出」の裏に見えた弱点 LCC好調で旅客数激増でも…

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ジェットスター・ジャパンは成田に続く第2拠点として関空発着路線を就航(筆者撮影)

喫緊の課題は2月28日に就航するジェットスター・ジャパンの関空-香港線の利用客への対応。3月29日以降、香港からの到着便が深夜2時となり、空港内で宿泊できる場所の整備が不可欠。ただ関空はバジェットホテルとも呼ばれる簡易宿泊施設を含む宿泊施設については検討しているようだが、当面の間、関空内で新しいホテルが具体的にオープンする予定はない。

関空内にはシティホテルランクのホテル日航関西空港があるが、それ以外に空港内にカプセルホテル型の簡易宿泊施設(羽田空港では「ファーストキャビン」、成田空港では「ナインアワーズ」)やビジネスホテルの整備が急務だろう。

野宿客が溢れかえる事態も

そうでないと、いよいよ空港内のベンチで朝まで過ごす(関空は希望者に無料で毛布を提供してもらえる)という選択肢しかなくなってしまう。野宿客が溢れかえってしまうかもしれない。さらに最悪のケースは、せっかく飛行機の便数が充実して航空券が安くなったのに、宿が取れないから旅行に出かけるのを止めてしまうという消費者行動だ。

新関西国際空港会社でも簡易宿泊施設を検討していたものの、関空と伊丹空港を運営する新関西国際空港会社が、今年7月25日に運営権を民間に売却する方針を発表。大型投資で慎重になっている可能性が高い。

関空・伊丹の両空港における滑走路及び空港ターミナルなどといった資産はこれまで通り新関西国際空港会社が所有し、公募によって選定された企業連合(コンソーシアム)が空港運営を担うことになる。2016年から運営権が移行される予定で現在、参加資格審査段階にあり、運営権の争奪戦がスタートしたばかりで簡易宿泊施設の計画は事実上動いていないだろう。

2015年6月に1つの企業連合に優先交渉権を与えられることになるが、優先交渉権を得た企業連合にはホテルも含めた新しい関空の姿をぜひ構築してもらいたい。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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