データでは「売れない」ファブリーズ大成功の理由 消臭芳香剤市場を2倍にした商品の意外な真実

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

サイクロデキストリンは、その内側の空洞に他の分子を取り込む包接という能力をもっている。この能力によって、他の成分を取り込むと、取り込んだ成分を光や熱から保護したり、水に溶けやすくしたりするという性質をもっている。ファブリーズはこのサイクロデキストリンを利用して、いったん布地の中に染み込んで、蒸発するときに臭いの元をつかみ取り、一緒に蒸発させるという特徴をもった製品として開発された。

当時、ファブリーズの開発はグローバル規模で行われていて、日本はカナダと並んでグローバルのテストマーケットとして位置づけられることになった。世界に先駆けて、日本とカナダにおいて、サイクロデキストリンの性質を活かした製品をつくるにはどうすればよいかが検討されていた。布地をサイクロデキストリンとともに水に浸してから乾かすようなタイプや、洗濯の後にサイクロデキストリンを投入して使用するタイプなど、さまざまなプロトタイプをつくっていった。

最終的な商品レベルに「欲しい」という声が皆無

そうしたプロトタイプを消費者パネルの方々に使用してもらい、フィードバックを受けての改良を続けた。グローバルレベルでの議論が行われ、臭いが気になるが簡単には洗濯することができない布地(カーテン、ソファ、コートなど)に吹きかけて使用するスプレータイプの消臭芳香剤という製品コンセプトがつくられた。

さて、ここからこの製品を商品化するに当たり、パッケージの大きさやデザイン、どのくらいのスプレー量がよいのか、スプレーハンドルの角度などをつくり込んでいった。同時にテレビCMはどんなものにすればいいのか、案を広げては絞り込んでいった。

最終的な商品レベルまで仕上がった段階で、市場導入前に、消費者を対象に、この商品がどのくらいの人に買ってもらえそうなのか、どのくらいの頻度で使ってもらえそうなのかを確認し、売上予測を出すための調査を実施し、データをとった。

結果、購入意向率はかなり低い。購入意向を示してくれた消費者が実際に使ってみての感想も「使う機会があまりないので1本使いきれない……」といった反応だった。「こんな商品を待っていました!」とか、「これ欲しい!」という声は、ほぼなかったのである。

次ページ「中止する」が妥当だが…
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事