日本の「コロナ死者数は10万人超」 衝撃の推計 ウクライナ危機でパンデミックは吹き飛んだか

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例えばヘルペスウイルスの一種「EBウイルス」は、世界中の全人口の95%が一度は感染する、ごくごくありふれたウイルスだ。

通常は、幼少期に感染して軽い風邪のような症状を経験し、いったんはそれで完全に収まってしまう。だが、体から完全に消えてなくなるのでなく、終生にわたって潜伏し続けることがポイントだ。

かつては体内に潜伏していても特に悪さはしないと考えられていたが、そう都合よくはいかないらしい。EBウイルスが、特定のがん(ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、上咽頭がん等)や、「多発性硬化症」という自己免疫疾患を引き起こす可能性が明らかになってきた。

がんや自己免疫疾患の多くは「原因不明」とされるが、その中には、知らないうちにウイルス感染していた場合や、発症のタイミングの問題などから因果関係がわからなくなっている場合も少なくないはずだ。

「withコロナ」の本当の意味とは?

冒頭で触れたように、新型コロナ自体はまだ世界的に下火でもなんでもない。ブラジルや欧州では「デルタクロン」なる新たな株が確認された。今後もまだ続々と変異株が表れるだろう。

それでも日本が“正常化”の道を選び、人々の動きが再び活発化すれば、新型コロナだけでなく、息をひそめていたほかの感染症も続々とオモテに出てくる。

風邪のような症状が新型コロナなのか、それ以外なのか、はたまた体調不良が何かの合併症や後遺症なのか、判断しづらくなる混沌が訪れる。

麻疹(はしか)や風疹、水痘(みずぼうそう)など昔から身近にあるウイルス感染症も、深刻な症状や合併症、後遺症のリスクが高い。だからこそ予防接種が定期化され公費負担となっている。

しかし今、接種を受けた世代も、過去にかかったことのある世代も、一様に免疫が弱まっている可能性がある。新型コロナ予防策の功罪だ。さまざまな病原体の侵入を遮断し続けていると、免疫が鍛錬されず、しだいに防御が手薄になってしまう。

完璧に新型コロナ対策してきた人ほど、いっきにさまざまな病原体の前にさらされたら守り切れないかもしれない……という皮肉な状況だ。

つまり「withコロナ」生活とは、新型コロナだけでなく、再び「身の回りのあらゆる病原体との濃厚接触を覚悟する」生活、ということだ。実は今以上に自衛の意識が求められる。

ただし、感染の仕組みや流行状況について正しい知識・情報を得て、適切な判断ができれば、一律で過度な自粛の押し付けからは解放される。適切な自衛によって自由を担保するのだ。

新型コロナワクチンの3回目接種をきっちり受けることはもちろん、コロナ禍で各種ワクチンを打ちそびれたお子さんや高齢者の方々などは、ぜひキャッチアップ接種を急いでいただきたい。また、これについては行政のサポートにも期待したい。

一方で、個人やコミュニティーごとの情報格差が大きいことも否めない。私自身は医師として、その差を少しでも埋められるよう、診療現場やSNSなどを通じた情報発信を続けていくつもりだ。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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