日本の「コロナ死者数は10万人超」 衝撃の推計 ウクライナ危機でパンデミックは吹き飛んだか

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こうして、ウクライナからの衝撃的なニュースが関心を引きつけている間に、世界はいよいよ「withコロナ」を新たなスタンダードとして受け入れようとしている。

もちろん正常化路線そのものについては、新型コロナ診療に携わってきた一医師としても、大枠では賛成だ。

日本は新型コロナ以降、自殺者が増加した。ステイホームや活動自粛の影響で、全年代で体力低下も顕著だ。受診控えで持病を悪化させた人もいたし、予防接種控えも多かった(過去記事【コロナうつ「自殺者数の異変」に見る意外な背景】【医師が警鐘「ステイホームによる健康被害は深刻」】)。

このままでは結局、多くの命が失われかねない。

一方で、正常化後の気がかりは、合併症や後遺症が見えづらくなることだ。

オミクロン株では、症状は軽症化傾向の一方、軽症や無症状でも、肺や呼吸器症状以外の合併症あるいは後遺症に悩まされる人もいる。新型コロナの合併症や後遺症(ロング・コビッド)は、当初考えられていたよりもずっと多岐にわたる。

血栓症、心筋炎などの心筋機能障害や不整脈、腎機能障害、肝機能障害、神経障害、皮膚炎などを、一難去ってまた一難とばかりに次々経験する人もいる。

さまざまな自己免疫疾患(免疫システムに異常が生じ、自分の体の組織を攻撃する病気)との関連も明らかになりつつある。全身倦怠感や体力低下が何カ月も改善せず、周囲の理解を得られずつらい状況に追い込まれた人もいる。

アメリカでは、パンデミックの間に小児の1型糖尿病の発症率が上がったことが報告された。1型糖尿病も自己免疫疾患で、いわゆる生活習慣病とされる2型糖尿病とは発症の仕組みがまるで異なる。

今後、新型コロナの検査や追跡は縮小・終了に向かい、感染そのものがますます見えづらくなっていく。合併症や後遺症が「原因不明の体調不良」として多発し、人々を困惑させることになるかもしれない。

合併症や後遺症は新型コロナだけじゃない

なお、誤解があるといけないが、新型コロナが特別に合併症・後遺症を起こしやすいということではない。総じてウイルス感染症には、やっかいな合併症や後遺症がつきものなのだ。

例えば、先にも挙げた心筋炎。新型コロナをきっかけに知ったという人も多いだろうが、ウイルス感染症の合併症としては“あるある”だ。もともと全症例の約50%〜70%がウイルス感染によるものとされている。

ただし実際の診療では、心筋の炎症は確認されても原因まで特定するのは難しい。状況や経験に基づいて推察するしかない。

身近なところでは、インフルエンザでも、非常にまれながら心筋炎は起きる。まれがゆえに発見が遅れ、致命的になることもある。世界5大医学雑誌の1つ『New England Journal of Medicine』は、インフルエンザ患者では心筋梗塞による入院の割合が6倍となる、というカナダの研究を報告している。

また原因不明とされていた自己免疫疾患でも、新型コロナに限らずさまざまなウイルス感染が引き金となりうることがわかってきた。

次ページがんや自己免疫疾患の多くは「原因不明」だが…
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