週刊東洋経済 最新号を読む(5/23号)
東洋経済オンラインとは
ライフ #おとなたちには、わからない

母に疎まれ「自分がバグった」彼女の心に起きた事 うつ、過食、入院から回復するまでの軌跡

10分で読める
  • 大塚 玲子 ノンフィクションライター
2/4 PAGES
3/4 PAGES
4/4 PAGES

「たとえば週6で働いている方のなかには、どこかで自分の心を殺しているんだけれど、それに気づいてしまうともうやっていけないから、気づかないふりをして生きている、という人もいるかもしれない。でも、我慢がないと日々が成り立たない状況ってどうなんだろう、と。

私がうつになったのもバグだったと思うし、過食嘔吐や自己否定もそう。それは病気の問題じゃないから、薬を飲むことが本当の対処ではない。だから、根っこに目を向けていくことで何かを変えていけることはあるんじゃないかと思うんですよね」

花さんは、かつて自分がうつや過食嘔吐になったことや、自分を安売りするようなことをしたのは、「たぶん、愛情がほしかったから」と振り返ります。

引きこもっていられたコロナ禍に見えてきたもの

最近もう1つ、花さんの回復を後押ししたことがあったといいます。コロナ禍です。

「ここ1、2年で『生まれてこなければよかった』という暗示が解けてきたのは、コロナ禍だったからかもしれません。引きこもっていられるじゃないですか。人に会おうと言われても断りやすいし。だから私にとっては『自分の軸』みたいなものを感じられる、すごくいい時間だったんです。自分は本当はどうしたいのだろう、みたいなことを考えることができて。

『(人生を)楽しんでいい』というのが腑に落ちた感じもします。以前はそう言われても、『楽しむってなんだろう?』と思っていて。たぶん親の影響もあって、生産性がないことには価値がない、みたいに考えちゃっていたんですけど、それがコロナのときに『ただ自分だけのために生きていい』ということがわかって、罪悪感がなくなった。それで、楽しむことにフォーカスできるようになったんです」

コロナ禍では孤立を深めて苦しむ人も多いですが、一方では花さんのように、1人の時間をようやく自らの回復にあてて、ほっと一息ついている人たちも、意外に多いのでしょうか。

「それまでは、いつも自分だけ浮いているような気がしていたんですが、コロナの緊急事態宣言中に初めて『自分以外の人も、人はみんな1人なのだな』という、あきらめのような気持ちが湧いて。そこでようやく『自分が自分の味方になる』ということをできるようになったのかもしれません」

過去の自分と同じような境遇の若い人たちには、「視点を増やすことを知ってもらいたい」と言います。

「若い子にとっていちばん大変なことって、『いま自分がいる世界しかない』と思っちゃうことだと思うんです。それしか見えなくなっているだけなんだけど、思い込みとはわからず、『一生そこから逃げられない』と思ってしまう。

だから、いろんなバイトとかしてほしいです。私はリゾートバイトとか代理出席のバイトとか、いろんな変なバイトをしているうちに、『世界は広いなあ』って思うようになりました。

あとは、出会った人、映画、本などのおかげで、視野が広がった。だから私も『こんな楽しいこともあるよ』『こんな人もいるよ』みたいなことを、知らせたいなと思います。知って『面白そう』と思えたら、その子も動けると思うので」

自分を閉ざすことが必要な時期もあるけれど、ときには「自分を開くことや、視点を増やすこと」をしてもらえたら。花さんは、どこかでこの記事を読んでくれる誰かが、そこから一歩踏み出せるよう、願っているのでした。

本連載では、いろいろな形の家族や環境で育った子どもの立場の方のお話をお待ちしております。周囲から「かわいそう」または「幸せそう」と思われていたけれど、実際は異なる思いを抱いていたという方。おおまかな内容を、こちらのフォームよりご連絡ください。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象