退院後はまだ頭がよく働かず、バイトに行っても「もう来なくていい」と言われてしまうことが続き、やむをえず「よくない仕事」や、水商売をしていたそう。水商売のときは、お酒のせいかあまり気がふさがずに済み、その頃から「ちょっと元気になっていった」ということです。
言葉にとらわれず、自由になりたい
花さんが今ここまで回復できたのは、なぜだったのか。最初のきっかけは薬をやめたことでしたが、「何がよかったと思うか」と尋ねたところ、花さんは考えながら、いくつかのことを話してくれました。
「23歳で再び実家を離れ、7年くらいでだいぶよくなりました。(2011年の)震災をきっかけに、微力でも自分にできることをしようと思ったのがきっかけです。一人暮らしのなかで自分に向き合い続けたことも、背景にあります。
あとは『名前(言葉)にとらわれたくない』という気持ちもありました。たとえば『毒親』という言葉に救われている人もいると思うんですけど、でも親元を離れてからもずっとそこにとらわれてしまっていると、楽になれないんじゃないかなと思って。
もちろん人それぞれ、選ぶことはさまざまでいいと思うんですけれど、私はできれば、そこから自由になりたかった。親を許すとかじゃなくて、自分を楽にしてあげたかったんですよね。親が許せなくて何十年も怒っている人の話を聞いていると、ずっとこういう気持ちで生きていくのは大変だろうなと。すごくわかるし、仲間意識も感じるんですけれど、でも自分とはアプローチが違うから、客観視できた部分もあります」
病院で「発達障害」と言われたことについても、「とらわれたくない」と話します。
「うつ病の診断を受けたとき、『発達障害もある』と言われたんですが、でもそれも、虐待の後遺症で脳の一部が委縮したり、神経回路が途切れたりしたせいかもしれない。私も若いときは『発達障害』という言葉に救われてきたことはありますが、でもずっとそう思っていると、抜け出せない気分になることもあって。
40歳を過ぎ、最近は『発達障害と言われたけど、できることを増やしていこう』と思うようになって、やっと部屋とか片付けられるようになったんです。すごく時間はかかったけれど、たぶん自分に合うやり方がわかれば、できるようになることはある。だから、言葉にとらわれないで、できるだけ自由になっていけたほうが楽なんじゃないかなと思ったりもします」
花さんが応募メッセージに書いてくれた、「本当はこうしたかった、という気持ちを押しこめて生きてしまうと、バグが出てしまう」というのは、どんなことを指していたのか。尋ねると、こんな説明をしてくれました。
「バグによる誤作動って、そのものに問題があるんじゃなくて、何か全然違うところに原因があったりする。でもその原因って、見つけづらいと思うんですよ」
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