「本当はこうしたかった、という気持ちを押しこめて生きてしまうと、バグが出てしまうのではないか」。取材応募メッセージの1通にあった、こんな言葉に目が留まりました。意図ははっきりしませんが、なんとなく「そうかもしれない」と感じられたのです。
送信してくれたのは、都内在住の女性、花さんです(仮名・40代)。母親から虐げられて育ち、万引きや過食嘔吐、うつの症状に苦しみ、一時期は精神病院に入院していましたが、その後回復して、いまは健康に働きながら、一人暮らしをしているといいます。
画面越しに顔をあわせた花さんは、はじめはやや固い表情でしたが、だんだんと笑顔を見せてくれるように。陽の光がよく入る、いかにも居心地のよい、ちょっとレトロな和室を背景に、過去をさかのぼってくれました。
足を持ってベランダから逆さに吊られた
母親は、子どもだった花さんが「子どもらしく振る舞うこと」が許せないようでした。笑えば「うるさい」と言われ、走れば「走るな」と言われ、やることなすこと怒られる。妹は何も言われず、母の矛先が向かうのはいつも花さんだけ。外ではとても愛想がよい母親だったので、誰にも相談などできませんでした。
「妹がいろいろ覚えていて。私は毎日、家の廊下に立たされていたらしいです。ご飯を食べない、テストが90点(100点じゃない)とかの理由で。ゴミ袋の中に入れられたり、足を持ってベランダから逆さに吊られたりしていたらしいんですけど、聞いてもあまり覚えていないんです。妹は『いまだったら捕まってるよね』と言うんですけれど、『え、そこまでだったんだ?』みたいな」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら