不妊治療支援の企業研修などを手がけるライフサカス代表の西部沙緒里氏は、ハラスメント発言をするようなタイプではない、心ある上司であってもついしてしまう「本人にとってはいやなこと」の筆頭として、業務の一方的な負担軽減をあげる。
「本人との十分なコミュニケーションをとらずに先回りして、治療している人をプロジェクトのリーダーから外す、楽な立場に仕事内容を変える、こういうことが、善意から起きてしまうことがよくあるのです。
実際に上司から『君に子どもができないのは働きすぎが原因だったんだよ。今は自分を大事にして』などと言われた人の話を聞いたことがありますが、上司はねぎらいのつもりだったとしても、本人は傷つきますよね。一方では、もちろん、当分は仕事のペースを落として妊娠を優先させたいと思う人もいます」
実際、前出の『不妊白書2018』を見ると、働き方を変えてもらってうれしかったというコメントもたくさんあった。
・直属の上司から「毎日定時で帰っても、突然休んでも、早退してもいいから辞めないで」と言われ、毎日定時に帰れるようになったので、とてもありがたいと思いました(20代正社員)
これらはあくまで対話の中で決められるべきなのだ。
「通院の予定」は本人にもわからない
通院の予定について聞かれるのも、職場によくある「されてつらいこと」の代表格だ。不妊治療は卵胞の発育を見ながら薬の量を調整したり、採卵の日を決めたりするため、先の見通しが立たない。ここがわかってもらえないと、たちまち、こうなる。
「いつ病院に行くのか、それは本人もわからず、診察ごとに『今日の卵胞は何ミリで、思ったより育っているので明日も来て』などと言われてしまうのが不妊治療なんです」と松本さんは言う。
「体外受精は生理周期(約28日)で1クールとなる治療で、「治療する月」と「お休みの月」があります。お休みの月は普通に仕事ができますが、治療に入る月は、本人にも予定がわからずとても申し訳ないと思っているでしょう。なので、『来週の通院予定は?』と聞かれるたびにビクッとしてしまうのです」(松本さん)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら