不妊治療の人を襲う「よかれと思って暴言」の苦痛 職場・夫・親・友人「ケース別」NG言動を紹介

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不妊治療をしていると誰かに告げて、「今月はいつ受精卵を戻す」などと話すことになったら、「その結果」が出る日がやってくる。しかし日本産科婦人科学会の統計によると、移植(受精卵を戻すこと)1回あたりの妊娠率は全年齢で見て3割強だ。しかも、その後に流産するケースも少なくはなく、出産に至る確率は2割強になる。

「職場などでは、できれば結果は聞かないであげてほしいと思います」と松本さんは言う。「妊娠できた場合など、知らせるべきことが起きていれれば本人から言うはずです。当事者としては、妊娠しないと『皆に協力してもらったのに妊娠できなかった』という心苦しさがあるのでとても複雑なのです」(松本さん)

部署「総出」でクリニック予約を取った人も

珍しいケースかも知れないが、職場ですばらしい協力体制を築くことができた女性もいる。証券会社に勤務する女性のAさんは、数少ない女性管理職として活躍していたが30代後半で不妊治療を決心した。その幕開けが面白い。

「ここにかかりたい、と決めたクリニックが大人気で、初診前に必ず受ける説明会が瞬時に満席になってしまうんです。毎朝9時30分にネットで申し込むんですが、1人で何日間かやってみたけれど、らちがあかない。それを知った部下が、ある日『皆でやりましょう』と言ってくれました」(Aさん)

ある朝、その部署は、9時30分の少し前になると、誰もが、Aさんがお目当てとする人気クリニックの申し込みページを静かに開いた。1人の社員がスピーカーフォンで時報を鳴らし始めた。

「午前9時29分55秒をお知らせします、ポ、ポ、ポ、ポーン!」

一斉に、各自あらかじめ作っておいたIDでエントリー。そして、まもなくひとりの若手社員が「入れました!予約、取れました!」と声をあげたそうだ。

こうして、Aさんの不妊治療は始まった。Aさんは、その後、そのクリニックの体外受精で2児を得て、今も周囲から妊娠・出産の相談をよくもちかけられるという。

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