ライフシフト遠い「変わらない国日本」の緩慢な死 不確実性が2乗、3乗になる家族&パートナー問題

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地方の中小企業には、不平等が顕著なところもまだ多い。入社段階から、正社員とそうでない人が分断しています。男性は全員が正社員だけれど、女性は全員が非正規社員というのが、慣習として定着している企業もまだ多い。そのため、優秀な女性は、地方を見限り、まだ男女差別が少ない都市部に流出します。さらに、男女平等が進んだ海外に活路を求める若い女性も増えています。

もちろんすべてがそうではないし、古い秩序にとらわれないベンチャー企業も地方にはありますが、ごく一部の、点としてしか存在しません。優秀な女性が戻ることはなく、このままでは、地方が衰退するのも当然でしょう。

解雇規制が生んだ身分制にしがみつく日本人

日本企業で、働きのよくない正社員を、地方の支社に回すという話を本当によく耳にします。経済が成長していた時代なら、なんとか本社で吸収できていたが、それが難しくなり、どこに回そうかとなって、その最後の場所が、地方になるというわけです。

基準に達しない人間でも、コネで入社させるという話もよく聞くようになりました。少子化の時代、人材に厳しくしたりきちんと選抜するよりも、コネでも入社してもらい、会社の評判と秩序を守るほうが安定するというのです。

「会社全体のためには、働きのよくない人材には、いてもらわないほうがいい。でもそうした人を守っておいたら、自分も将来守られるだろう」という戦略が正社員の間で働いてしまっている。

終身雇用の日本企業では、いったん正社員になれば、ずっと収入が安定します。会社というのは1つの世界にすぎませんが、そのなかで正規と非正規の格差が固定化されて、生涯賃金の差が開くということになってしまいます。

一方、アメリカは、正社員になったり失業したり、アップダウンがありますから、一時点で大きな格差はあっても、生涯全体で見ればそれが縮まることもありえる。でも、日本はそうはなっていない。

日本でも、一部のグローバルに勝負せざるをえない大企業は変わろうとしていますし、一部ですがベンチャーなども出てきました。しかし、大多数の人は、世界が不確実化していることを認めたがらない中小企業で働いています。そして政府も、私たちの人生がどう不確実化していくのかは言いたがりません。

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