ライフシフト遠い「変わらない国日本」の緩慢な死 不確実性が2乗、3乗になる家族&パートナー問題

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グローバル化や技術革新などがもたらす変化は、プラスの面だけではなく……(写真:Ushico/PIXTA)
1990年代から日本社会の変容を見つめ、「希望格差社会」「婚活」といった言葉を生み出して状況の悪化に警鐘を鳴らし続けた山田教授が、14万部のベストセラーとなっている『ライフ・シフト2』のブームについて思うこととは。家族社会学を専門とし、親子・夫婦・恋人などの人間関係を社会学的に読み解く試みを続けている山田教授が、今の日本社会の状況を読み解く。

不確実化への適応不全

人生70年と言われていた時代、日本経済は工業が中心で、家族が安定し、経済・企業は成長していました。日本人はその時代にあまりにもうまく適応してしまったがために、その後にやって来たIT革命、グローバル化時代の不確実性やリスクに対して、適応不全を起こしてしまったという印象があります。

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クリントン政権時代の労働長官を務めた経済学者、ロバート・B・ライシュは2000年に『勝者の代償』(邦訳東洋経済新報社、2002年)を書き、グローバル化や技術革新などがもたらす変化によって人々は自由になり、プラスの面ももたらされるが、同時に格差の拡大も生じ、家族やコミュニティが衰退するだろうと述べました。

あれから約20年が過ぎ、もうそんなことは当たり前のこととなりました。2021年に刊行された『ライフ・シフト2』では、そうした変化に適応するためにどう生きるかを考えるというスタンスが基本になっています。

しかし私のような社会学者は、その流れに適応できずに落ちこぼれてしまう人はいったいどうなってしまうのかと考えます。

まず、人によって戦略格差がでてきますね。『ライフ・シフト』以前の3ステージ型人生の時代には、レールに乗って言われることをやっていれば、深く考えることはなくても一生幸せな生活を送ることができました。

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