エンタメ界の性的強要はなぜ根絶できないのか 呆れた実態、力を持つ人が陥る危険な思考回路

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ネット上で告発しやすくなり、一気に拡散されるようになったこと。暴露系YouTuberの存在なども含め、やはり力や立場のある人は、「あわよくば」という下心との向き合い方を真剣に考えておいたほうがよさそうです。

性的強要の社会的制裁に時効はない

最後に話をエンタメ界に戻すと、ファンあってのビジネスである限り、「時代に合わない悪しき習慣は本気で変えていく」という確固たる姿勢を打ち出すことが必要ではないでしょうか。

たとえば業界の大物たちが、合意の有無にかかわらず枕営業の全面禁止・厳罰化を宣言。プロデューサーや監督などの力を持っている人は、誓約書を交わすなどの強い姿勢を見せれば、夢を追う人々だけでなく、世間の人々から支持を集めるでしょう。さらに、若い才能が次々に開花して業界全体が活気づくかもしれません。

ちなみに、昭和のころからしばしば見られてきた「監督と女優が結婚」などのケースは現在でもありえるものですが、クリーンさを求められる時代だけに、祝福ムードが生まれづらくなっているのも事実。「そういう業界だから仕方がない」「昔からそうだから」というムードを消し去るためには、「本当に力を持っているトップ自らが変わること」が必要な気がするのです。

4年前に「#Me Too運動」が広がったように、今回もこれまで沈黙してきた被害者たちが声をあげるかもしれません。そして、その被害は最近のものだけではなく、法的なことはさておき「社会的制裁という意味での時効はない」こともリスクの高さを物語っています。

性的強要は何年前の行為だったとしても、仕事を干される、周囲の人々が離れるには十分すぎる理由。芸能人だけでなく、ビジネスパーソンにとっても、自分がそれに至る、あるいは疑惑だとしても告発されるリスクを限りなくゼロに近づけておくようにしたいところです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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