エンタメ界の性的強要はなぜ根絶できないのか 呆れた実態、力を持つ人が陥る危険な思考回路
監督だけでなく、プロデューサー、大物芸能人、事務所幹部、スポンサーなど、エンタメの現場には力を持つ人が多く、また組織の大小による力関係もあり、残念ながら「キャスティングは必ずしも実力によるフェアな競争」とは言えません。他業種と比べても、具体的な作品名などで相手に力を感じさせやすいところがあり、ついそれを誇示したくなってしまうことが性的強要の入り口となっています。
一方、選んでもらう側の力を持たない人々は、「使ってもらえなければ何もはじまらない」「そもそもチャンスの機会が少ない」という厳しい現実にさらされている状態。貧困に悩まされる人が多いうえに、全国規模のテレビや映画は遠い夢であるため、「報酬の安い小規模な作品のほうが性被害は深刻」という声も聞きます。
これは俳優だけの話ではなく、アイドル、アーティスト、クリエイターなども同様。たとえば、「アイドルがプロデューサーやスポンサーから性的被害に遭った」というケースは何度か聞いたことがありますし、「けっきょく大したチャンスをもらえず泣き寝入りに終わった」という人も少なくないようです。
また、力を持つ人が愚かな行為に至ってしまうもう1つの理由は、「本当の意味で力を持っているわけではない」から。たとえば映画は、前述したように力を持つ多くの人が関わるものであり、監督など誰か1人の思い通りになるとは限りません。個人の力が絶対的なものではないからこそ、「それが通用する弱い立場の人に誇示することで自分を満たそう」とする傾向があるのです。
「ウィン・ウィン」の関係性でも危ない
そのように相手との力関係を見て性的強要を行う加害者が本当に罪深いのは、「軽い気持ちで性的欲求を満たそうとしただけで、それ以外はあまり考えていない」こと。たとえば監督や俳優であれば、性的被害のシーンがある作品に関わる可能性は決して低くありません。しかし、被害者にしてみれば、憎き加害者が性的被害を扱っていることを知ったら、今回のように「許せない」と怒るのは当然であり、だから自らのリスクを承知で告発したのではないでしょうか。
加害者が「あまり考えていない」のは、「これくらいなら大丈夫だろう」と相手を甘く見すぎているからであり、やはり力関係を根拠にしています。だから周囲から見たら、「そりゃ告発されるよ」「そんなにひどいことをしたら恨まれて当然」と驚くほど、言動が自分勝手なケースが多いのです。
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