中国が抱える「感染爆発の香港」という大きな難題 「ゼロコロナ政策」への移行で疑問視される意義

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習近平総書記が社会の安定に特に言及していることからは、防疫をめぐる政府内の意見対立や市民の反発などが政治問題化することへの憂慮がにじむ。2019年の巨大抗議活動の悪夢はまだ去っていないのであろう。

香港政府はこれを受けて、さらに厳しい防疫措置へと政策転換を強いられた。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は当初、3月27日に予定されていた行政長官選挙の延期は無用としていたが、習近平総書記の指示の後、防疫最優先の観点から選挙を5月8日に延期すると発表した。選挙自体は事実上北京の意向で当選者が決まる仕組みであるから、防疫の成否は林鄭月娥再選の行方も左右しよう。ワクチン未接種者のショッピングモールやレストラン等への入場も禁じられた。

「中国式」防疫への試練

西側諸国には実現不能な「ゼロコロナ」を達成しているとする中国は、感染爆発の元兇と見なされる立場から、一躍世界に冠たる防疫の成功例へと転じた。中国の防疫政策は、感染者が発生した際、その接触者を素早く特定し、大規模な検査や建物・地域などの封鎖を行って感染を早期に封じ込めることを特徴とし、そのために行動監視アプリが活用されている。プライバシーや私権を制限することで実現できる中国ならではの政策であり、その成功は単に政策の成功というだけでなく、中国の体制の優位性の象徴にまで持ち上げられている。

だが、香港の事例は、「中国式」が、中国以外の地ではおよそ応用困難であることを示す。それだけでなく、シナリオ通りの管理が困難な大きな問題が持ち上がった際に、「中国式」システムがそれに対応する能力の限界も露呈している。

人口約750万人の香港で、1日当たり5万人規模の感染者が市内至るところから確認される状況、しかも病院も隔離施設も足りない状態では、接触者の特定や隔離は防疫上大きな意味を持ちえない。

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