中国が抱える「感染爆発の香港」という大きな難題 「ゼロコロナ政策」への移行で疑問視される意義

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3月9日に開かれた記者会見に出席した香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(右から2番目)など(写真:Peter Parks/AFP/Bloomberg)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

突如やってきた感染爆発

世界の耳目がウクライナに集まる中、まったく異なる苦闘を強いられているのが香港である。戦いの相手は新型コロナだ。

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感染の発生から2年あまり、香港は比較的よく感染を抑え込んできた。しかし、オミクロン株の流入により状況は一変、新規感染者数は1月下旬に1日当たり100人を突破した後、みるみる増加し、2月9日に初めて同1000人を突破、25日には同1万人を超え、3月2日には同5万人を上回るといった形で、まさに爆発的に増加した。

ベッドは不足し、病院前には長い行列ができた。死者も1日当たり100人を超えるようになり、一部の公立病院では霊安室があふれ、遺体を救急室に安置するほどの事態を招いた。物流を担うトラック運転手が多数感染したことで生鮮食料品の品薄が発生し、鉄道やバスも間引き運転や運休を強いられている。幼稚園と小中学校は3月7日から前倒しで「夏休み」に入った。

この状況には中国政府も大いに危機感を抱いている。2月16日の香港の共産党系新聞『大公報』と『文匯報』は一面で、習近平総書記が香港政府に対して、「防疫をすべてに勝る現下の最優先課題とし、すべての力と資源を動員し、すべての措置を講じて、市民の生命の安全と健康を確保し、香港社会全体の安定を維持せねばならない」との『重要指示』を発出した」と報じた。香港をめぐって共産党総書記が「重要指示」を発出するのは極めて異例の事態である。

次ページ政府内の意見対立や市民の反発などへの憂慮がにじむ
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