日本と中国の間に不可欠な「普遍的価値」めぐる対話 共通の利益を模索するための戦略的選択が必要だ

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日中関係における戦略的選択アプローチを考える(写真:fpdress/gettyimages)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

「価値観」をめぐる対立

ロシアによるウクライナ侵攻は、世界的課題を明示した。地政学的リスクが高まる中で、人類共通の「普遍的価値」である「平和」を再構築できるのか、人権の擁護や法の支配などの実効性ある取り組みが可能か、国際社会はあらためて問われている。

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かつて日本と中国は戦争状態を終結させ、政治社会体制やイデオロギーの相違を越えて国交を回復した。日中関係は紆余曲折を経て、国交正常化50周年をむかえた現在もなお関係改善の道半ばにあるが、重要な二国間関係であるだけでなく、アジア太平洋地域および世界の平和と安定に対しても大きな影響力を有していることは共通認識である。現在、国際秩序の再構築が進む中で、日本と中国は利害の対立を回避し、共通の利益を模索して合意形成を図る戦略的選択アプローチによって、両国関係をさらに発展させる必要がある。

国際社会は政治社会体制の優位性を競い合う構造へと変化し、体制間競争の背景にある「価値観」をめぐる対立が顕著になっている。新型コロナウイルス感染症への対応はその代表的な例だ。民主主義と権威主義の体制下において、生命および健康を守るという「価値観」は共通するが、個人の権利や社会の安定に対する認識や解釈などの相違点も浮き彫りになった。

中国共産党が指導する権威主義体制は、世界最先端のデジタルテクノロジーを駆使した中国式ガバナンスモデルを確立して国際社会に大きなインパクトをもたらしており、中国をめぐる議論においても「価値観」の対立が重要なイシューとなっている。

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