ウクライナ侵攻「正しい情報」見抜くプロの読む力 「陰謀論、間違った情報」にだまされない秘訣

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今回のウクライナ侵攻では、たとえば防衛省の防衛研究所の人たちのアカウントが、きわめて権威のある研究機関である。この研究所に所属する研究者の人たちのアカウントもリストに追加しておく。

気をつけなければならないのは、「スタート地点」に入れる場合には「現役の研究者」「現役の職員」にしておいたほうが安全ということである。

なぜなら、ごくまれに権威ある機関を引退した人が、陰謀論者などに「闇落ち」してしまうケースが起きるからである。

たとえば、今回のウクライナ侵攻では、引退した日本の元外交官が、「ウクライナ政府が親ロシア住民を虐殺」といった怪しいニュースをさかんに流している。この人は「真実」「正体」「ディープステート」などの陰謀用語がタイトルにちりばめられた本を大量に刊行しており、近づいてはいけない

また、その分野で権威のあるメディアも大切である。ウクライナ侵攻では、わたしは「スタート地点」の1つとしてアメリカの外交問題評議会が出している雑誌の日本語版『フォーリン・アフェアーズ・リポート』をスタート地点に入れている。

この雑誌は外交関係の雑誌としては強い権威がある。どこまでもアメリカの視点で書かれているというバイアスはあるけれども、そのバイアスを理解したうえで読めば、非常に信頼が置ける。

「ウクライナ情勢」リストに入れて追いかけている専門家たちの投稿を、この雑誌で書かれている記事の論調と比較していくのがポイントである。

アメリカの外交視点と日本の研究者の視点は異なるので見解の違いはもちろん出てくるが、「現状をどう分析しているのか」というところが合致していれば安心していい

「SNS時代の新しい読み方」を身につける

このようにして作成した「ウクライナ情勢」のリストは、随時アカウントを追加したりしながら、毎日追いかけている。

ウクライナの事態が大きく動くとツイートの数は増え、ときに1日に数百にもなるが、このリストの投稿を追いかけ、ツイートで紹介されている記事なども読めば、ウクライナ侵攻の全容を俯瞰でき、専門家たちが現状をどう分析し、今後どうなると予測しているのかをつぶさに知ることができる

くわえて紹介されている記事や本を読むことで、ロシアとウクライナの関係などの歴史もきっちり学ぶことができるのだ。ぜひ、今回紹介したような「SNS時代の新しい読み方」を身につけ、自分自身で時代を深く読む力を身につけていただきたい。

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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