「ウクライナと露」エネルギーから見る危機の歴史 ロシアと欧州「エネルギー安全保障重視の契機」

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ロシア政府はこれらの「色の革命」の背後には、西側の非政府組織の支援があると見るとともに、旧ソ連諸国からロシアの「特権的な」影響力を排除することを目的とする西側の「保安局」の支援もあるのではないかと疑っていた。

さらに由々しいのは、オレンジ革命をきっかけにNATO──すでにバルト諸国が加盟していた──がウクライナのロシア国境に部隊を派遣する可能性があったことだ。これはロシアの安全保障にとって「直接の脅威」になると、プーチンは述べた。加えて、「色の革命」が伝播して、モスクワの赤の広場まで広がるリスクもあった。

ガスパイプラインを巡る闘い

ユシチェンコの勝利後、ロシアは天然ガスの価格交渉で態度を硬化させた。ウクライナがロシアに支払っている天然ガスの代金は、西欧諸国が支払っている代金の3分の1以下だった。すでに未払いの代金が何十億ドルにも膨らみ、しかも今やロシアから離反しようとする大統領に率いられているのに、どうして、安価な天然ガスによって、年間何十億ドルという規模の助成をウクライナに対してしなくてはいけないのか、とロシアは言い立てた。

収入のほかにもロシア政府には狙いがあった。それは欧州への天然ガスの輸送に使っているウクライナ領土内のガスパイプラインを、ロシアの管理下に置くことだ。ただし、そのことは交渉のテーブルには載せられなかった。ユシチェンコに言わせると、ソ連時代に敷設されたそれらのパイプラインは、新独立国ウクライナの「重要な資産(クラウン・ジュエル)」だった。

2006年1月1日、問題の解決が見通せない状況で、ガスプロムがウクライナ向けの天然ガスの供給を停止した。しかしウクライナはこれに対し、欧州向けの天然ガスを抜き取った。その結果、欧州への天然ガスの供給が滞って、ロシアは欧州との関係を悪化させる事態に陥った。

ロシア政府の主張では、供給停止は政治的な措置ではなく、あくまで経済的な理由によるもの、「市場価格」にもとづくもの──大幅に値引かれた料金ではなく、正規の料金をウクライナに払ってもらうためのもの──とされた。

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