別々のアイデンティティを持つと主張するウクライナ
欧州へのロシアの天然ガスの供給(欧州の天然ガスの総消費量の約35%を占める)は、地政学的な対立の中心をなしている。そこには次のような基本的な問いがある。この依存と巨額の天然ガスビジネスは、ロシアの国力と影響力を高めるのに都合よく利用されているのか、それともこの貿易関係は地理的な理由で築かれていて、相互互恵的なものなのか。あるいはその両方なら、どこでバランスを取ればいいのか。
この緊張状態が一番あらわになっているのは、亀裂が生じ、武力衝突にまで発展しているロシアとウクライナとの関係においてだ。その影響は欧州のエネルギー市場のほか、米ロ関係にも及んでいる。
米国の軍事予算から、2016年の大統領選での国民の分断、世界の二大核保有国の敵対関係の深まり、2020年のドナルド・トランプの弾劾裁判にまで、ロシアとウクライナの対立の影響が認められる。実際、ロシアと西側諸国の新たな敵対関係(新たな冷戦)の最も重要な原因を1つ選ぶとしたら、それはソ連の崩壊とその後の展開の中で生じ、いまだに解決されていない難題であるウクライナ問題になるだろう。
「ウクライナ」という名は「縁(へり)」または「辺境の地」を意味する言葉に由来する。ウクライナと呼ばれる地域には見渡す限り平地が広がり、自然の境界はほとんどない。ここに中世、ウクライナとロシアの両国が自国の起源と見なすキエフ大公国があった。
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