幻冬舎の非上場化は、出版業界激変の「一里塚」


 見城氏が具体的に非上場化を考え始めたのは今年の夏頃。「よりいい本を作って、知らしめれば本は売れる」と見城氏はこれまで信じてきた。だが、本当にそれでいいのか、いまの出版のビジネスモデルが今後も通用するのか、疑問は心の中で大きくなっていた。なにしろ、09年度の出版の販売金額は5年連続で前年を下回り、21年ぶりに2兆円を割れた。

幻冬舎の1株純資産は36万円(10年6月末)。対して株価はその半値以下で推移していた。これはなにを意味するかと言えば、これから幻冬舎は資産を食いつぶしていくだろう、と市場が考えているということだ。まさに、ディスカウント・キャッシュフロー。「小さなヒット作を作り、小手先で結果を求めても仕方がない」(久保田氏)。

「経営と資本を一体化させ、構造改革をしないと生き残れない」。見城氏の危機感が非上場化の道を選択させた。

加えて、上場のメリットがまったくない、と幻冬舎が考えたのも事実。上場のコストは人件費も含め「年間1億円」(久保田氏)かかる。株価は低く、このカネ余りの金融情勢では資本市場から資金を調達することはありえない。上場、非上場で、金融機関の格付が変わるわけでもない。「むしろ、上場コストを考えると重荷になる。私自身、上場ディスカウントとよんでいる」と久保田氏も自嘲気味だ。

見城氏は、幻冬舎を非上場にすることでフリーハンドを得る。目先の業績に囚われる必要もない。中長期の視点で経営ができる。非上場化はむしろ、どんな環境の変化にも耐えるという見城氏の戦闘宣言でもある。

ときあたかも作家の村上龍氏は11月4日、電子書籍を制作・販売する新会社を5日付けで設立すると発表した。作家の取り分は作品によって変わるが、電子化コスト回収後は、売り上げの90~70%を作家に配分する、という。

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