次のМ&Aでは、癒やしとオーガニックを取り込む
日用品で圧倒的なシェアを誇るトイレタリーの巨人、花王。原材料高を前に3期連続の減益に陥る見込みだが、むしろ経営戦略から感じるのは攻めの姿勢だ。カネボウ化粧品買収から2年、新たな買収に動き出す気配もある。「最強のマーケッター」と呼ばれた尾崎社長が見据える市場と将来戦略を聞く。
(週刊東洋経済2月16日号より)
かつて24期連続経常増益を記録した超優良会社、花王に異変が起きている。2008年3月期、同社は3期連続の経常減益に陥る見込みだ。原因は原材料価格の高騰。期初の段階で、原材料高によるコストアップは年間80億円程度と見込んでいたが、フタを開けてみれば200億円に膨らんだ。慎重な花王が見誤るほど、原材料高の進行は深刻である。
だが、その花王になぜか暗さはない。カネボウ化粧品がフル連結され売り上げは1兆3000億円を突破、一方の主力事業である国内日用品も目先は明らかな増勢だ。さらに、カネボウ化粧品買収から2年、いよいよ次のM&Aに向けて動き出す気配が漂っている。
--花王の場合、原材料価格の高騰はどういう経路で響くのですか。
直接原油を使っているわけではないが、包装材などに影響を受けています。それにパーム油やヤシ油といった天然油脂の高騰。当社は天然油脂から高級アルコールを製造し、最終的にシャンプーの基材などに使っていく。07年度でだいたい200億円はコストアップ要因になる。営業利益が1100億円とか、1200億円ですから、ものすごいインパクトです。化学品のビジネスはある程度価格転嫁できますが、日用品の価格対応は非常に難しい。
--コストはきついけれど、国内日用品の販売は好調ですね。
市場自体、金額ベースで103%程度の伸びを示しています。各社の高付加価値化競争によって、市場そのものが浮上してきている。おかげさまで花王のマーケティングシェアも上がっています。
--製品の付加価値を上げ、価格も上げる。それが正しい値上げだということですか。
正しいとか、正しくないかということではなくて、要するに何ができるかということだと思うんです。いくら卸価格を上げても、小売価格が上がらないことには、実際の値上げにはならない。われわれがやれるのは、商品の価値を上げて、最終の小売価格を上げていただくことがいちばん。そこに企業の技術力とか、マーケティング力、そういったもののポテンシャルを大いに発揮してやっていくべきではないか。そういうスタンスです。