棚橋:でしょう? それは志なんですよ。そういう気持ちで生きてるんだという生き方を示してる言葉なんです。やっぱり企業だって、「ああ、疲れた」と言う人間よりも「俺は疲れたことがないです。使ってください」と言う人間のほうがいいに決まってる。企業の都合のいい人間になれという意味じゃなくてね。
お付き合いでキャバクラに行くと、隣に女の子がつくじゃないですか。ある時女の子が、「お疲れさまです」と言いながら隣に座って、そのとき、僕はたまたま「ああ、ありがとう。でも大丈夫。俺、疲れてないから」と言ったんですね。そうしたら、その子が「えー、すごい! 疲れないんですか」って感心してくれた。それで僕も、ああそうなのかと。“疲れない男”は女性に響くのかと。
塩野:めちゃくちゃかっこいいですね。
棚橋:しかも、じゃけんに「疲れてないから」というのではなく、「お疲れさまです」というねぎらいの言葉に対して「ありがとう」と感謝してからの、「でも大丈夫。俺、疲れてないから」。これ、女性に対しては100点の答えですね(笑)。
塩野:かっこいいですね(笑)。やっぱり言い切るのが大事。ビジネスマンも同じですね。
棚橋:そうなんですよ。プロレス界もそうで、記者会見とかタイトルマッチ前とか、若い選手は「頑張りたいと思います」「勝ちたいと思います」と言う。「思います」じゃない。「勝ちます」でいいんですよ。「絶対ベルト取ります」でいい。「取りたいと思います」と「取ります」を意識して使い分けている人はあまりいないでしょうけど、無意識下で絶対印象が違うんですよ。だから僕は若い子たちに「必ず言い切れよ」と言います。「“思います”じゃねえだろう。取るんだったら、“取ります”と言え」って。
塩野:確かに言い切ると伝わり方が違いますね。
ところで棚橋選手は先ほど話が出た「プロレス冬の時代」のころも、自分だけでなく、新日本という会社や業界全体の将来を考えてらしたと思うんです。いつごろから、そういうふうになったんですか。
棚橋:そうですね。わりと早い段階から俯瞰して見ることができていましたね。ただ会社が「棚橋で盛り上げていきたい」と決めて、中心に据えられてからは、俯瞰してばかりはいられなくなったわけですよ。冬の時代と言われるさなかにチャンピオンになって、いわば神輿に乗ったわけですね。そうしたら神輿に担がれただけの覚悟がいるわけですよ。
マイナスをチャンスととらえる
塩野:いやもう、人によってはプレッシャーでうろたえるレベルだと思いますよ。でもそこから徐々にプロレス業界が盛り上がってきて、今や女性や子ども連れも見に来ていますからね。
棚橋:でも、今が頂点じゃないですからね。もっとビジネスを大きくします。まだプロレスを知っている人よりも、知らない人のほうが100倍、1000倍、もっと多いかもしれない。まだプロレスにはビジネスのチャンスがいっぱいある。知られていないというのは、すごいチャンスですね。
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