定年延長は時期尚早 継続雇用を確実に実現--日本労働組合総連合会会長・古賀伸明《討論・70歳まで働くべきか!?》

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 65歳定年の法定化についても、それほど簡単ではない。職種によっては60歳を超えると、体力、健康、意欲などの点で相当な個人差が出る。画一的ではなく、個々人のニーズに合った働き方や労働時間を選択できる制度が望ましい。企業は職場の技術伝承など高齢者の役割を明確にしたうえで、柔軟に働ける職場環境の整備をまず進めるべきだ。

また、法定で定年延長となれば、企業は賃金カーブを今まで以上にフラットにして、その面積(生涯賃金)を60歳定年制と変わらないようにするだろう。賃金カーブのフラット化が進んできたのは事実だが、あまり行き過ぎると、子どもの教育や親の介護にカネのかかる40~50代の賃金が減少する事態も十分想定される。

高齢者の置かれた状況は企業によっても異なる。高齢者が中心的な役割を果たしている企業では、賃金カーブを変えてでも65歳まで定年を延長するだろう。ただそのような企業がどんどん増えて、過半を占めているかといえばそうではない。いったん定年となり、継続雇用で生活に困らない程度の収入が得られればいいというのが今のところの総意。もちろん、年齢や性別に関係なく働ける社会の構築は重要だが、少し順序が違うのではないか。まず本人の意思を100%尊重する制度が優先されるべきだ。

こが・のぶあき
1952年生まれ。75年松下電器産業(現パナソニック)入社。同社労働組合中央執行委員長等を経て、2005年連合事務局長、09年10月より現職。

(撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2010年10月2日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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