反対に、以前、勤務した際の評判が悪い場合は、前述の「お互いを知っている」ことが逆に働いてしまいます。まったく新規採用に比べてマイナスのバイアスを会社側に持たれたうえでのスタートですので、必然的に状況は厳しくなります。
なお、ここでいう「評判」とは以前勤務していた際の仕事上のこともそうですし、周りとの人間関係や退職する際の引き継ぎなどの基本的な振る舞いやマナーも含まれます、念のため。
前の印象がプラスに働くか、マイナスに働くか
さて、ここまででおわかりのように、以前、勤務していた会社へ再び戻ることと、まったく新たな会社へ応募することのいちばんの違いは、双方共に、お互いに対して何かしらの先入観や前提、事前知識がすでに形成されている状態にあるか否かです。
以前、本連載に「採用とは対象者の実力などに関する不確実性を排除するためのプロセスであるとも言える」と書きましたが、古巣に戻るというのは、その不確実性がそれなりに排除されている、つまりプラスであれマイナスであれ、何かしらの印象がお互いの中で構築されている状態ということです。その印象がプラスであれば今回の意思決定においてもプラスに働きますし、マイナスであればマイナスに働きます。
戻りたいと考えているということは、Mさんは以前の勤務先に少なくとも悪い印象を持っていないのでしょう。そう考えますと、戻れるか否かの最初の前提は、あくまでも以前、勤務されていたときのMさんの実績いかんによる、すなわち相手にどう評価されていたか、になります。
そのうえで、会社から離れている間にMさんとしてどんな成長を遂げてきたか、そしてそれは会社へどう貢献できるのかが問われると思います。同時に、外の会社を経験したうえで、なぜ今、再度、戻りたいのか、その理由をご自身の今後のキャリア観だけでなく、外での経験を踏まえて説明する必要もあるでしょう。
その際にはお互いのニーズ、すなわち「どんなことができるか」と「どんな人材がほしいか」をきちんと理解したうえで話をすることが求められます。
そう考えますと、以前、所属していた際の実績や貢献についてはお互いの共通のテーマですので、下手に飾ることなく、しかし十分にアピールポイントとして使えるとよいですね。
Mさん自身が思ういちばんの貢献や成し遂げた結果などを話すとともに、今であればそれらに加えてどんな貢献ができるのかを話す準備をしておくことが大切です。
反対に、以前、起こしたミスなどについてもなぜ当時できなかったのかに加えて、今ならどうするかなど、会社を離れていた間の成長を語れる準備が必要だと思います。
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