宮沢賢治もディベートをしていた!? 日本の教育を変えるキーマン 松本 茂(2)

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安河内:日本ではディベートの歴史はまだ浅いというイメージがあるのですが、いつぐらいから始まったのでしょう?

松本:日本におけるディベート教育の歴史は意外と長くて、あの福沢諭吉先生も指導していました。寺院や教会でも議論教育が昔から行われていました。また、宮沢賢治先生も花巻農学校で教師を数年間していたときに、日本語でのディベートを行っています。授業では「春のほうが秋よりも良い季節だ」といった論題で。また、松並木を売ったおカネで花巻に公民館を建てるかどうかで、生徒と共に宮沢賢治先生チームともうひとりの先生チームで、全校生徒の前でディベートをしたそうです。

安河内:なるほど。日本でもかなり前から存在していたわけですね。

松本:ええ。もちろんその当時は、「ディベート」という呼び名が浸透していたわけではなく、「討論」といった言葉が使われていたようです。

4技能大学入試に向けて、中高でまずすべきこと

安河内:では、先生の英語半生を伺い終わったところで、英語教育の現状について話をしたいと思います。大学入試の4技能化は、文科省の人と話していても、実現のスピードはかなり早くなるという感触を私は得ています。安倍政権がこのまま続けば大学入試の英語4技能化は不可避だと思うのですが、となると日本人が忌避してきたスピーキングが、大学入試といういちばん大きな枠に組み込まれることになります。もうスピーキングから完全に逃げられなくなったと言えますよね。

今までならディベート、プレゼン、スピーキング、英会話などができなくても大学に入れたのが、今後はそうはいかなくなる。スピーキングができないと、大学に入れない時代がそこまで来ている。ここからウォッシュバック効果(波及効果)が広がっていくと思うんですね。スピーキングテストの特徴としては、agree、disagreeのどちらかの立場で論理的に話さなければいけないことが多くなります。

そこで私の意見としては、ディベートやプレゼンを中学生ぐらいから少しずつ始めていくことが大事だと思うのです。でも大半の先生はどう進めていいかわからない。中学、高校の先生自身、ディベートの授業を受けたことがないわけですから仕方ありませんよね。松本先生が中学時代に受けられたというオールイングリッシュの授業にはかなり近づいてはいますが、ディベートとなるとまだまだです。 まず、どうすればいいのでしょう?

松本:まず、argumentative essay(論証文)をたくさん生徒に読ませる必要があると思います。立場を表明して「私はこう思う」と書いてあるものですね。検定教科書を見てみると、そういったたぐいの読み物が非常に少ないのです。

安河内:確かにそうですね。

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