宮沢賢治もディベートをしていた!? 日本の教育を変えるキーマン 松本 茂(2)

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松本:ひとつには、英語教育界ではコミュニケーションが文法訳読の対極を意味する言葉として使われてしまったということが大きいと思います。だから、想起するものが「会話」になってしまうんですね。もうひとつは、「学習指導要領」においても実はコミュニケーションは定義されていないのです。

安河内:それでも、文科省は「コミュニケーション英語」という科目を立てることはしているので、コミュニケーション重視という流れは間違いなくあります。立教大学にもコミュニケーション学部がありますよね?

松本:はい。異文化コミュニケーション学部です。

安河内:では、松本先生が考えるコミュニケーションとはどういうものですか?

松本:一言で言うなら「関係性」です。言語や非言語など媒体です。だから単なる「伝達」ではないのです。

安河内:言葉のキャッチボールだと?

松本:言葉のキャッチボールというよりも「時間と場を共有している状況」ですね。

安河内:その中には、通常の日常会話も含まれるし、論理的に相手を説得することも、議論を闘わせることも含まれるのですよね?

松本:はい。ほかにもメール、電話、手紙でのやり取りなどもそうです。関係性が成立していれば、どんな状況でも当てはまります。

安河内:では、「コミュニケーション=英会話」ではないということですよね?

松本:もちろんイコールではありません。コミュニケーションを成立させる言葉の機能としては、口語だけでなく、「聞く」「話す」「読む」「書く」が存在します。

安河内:コミュニケーションが「時間と場」ということは、私はとてもよくわかるのですが、中には「?」となってしまう人が少なくない気がしますけれども。

松本:たとえば200人といった大人数を相手にした講義形式の授業を私がやるとします。私が話をしている大教室にいる学生たちは一言も言葉を発せずにいても、時間と場を共有しているので、全員が私とコミュニケーションという関係性を共有しているのです。寝ている学生がいた場合、私は「周囲の学生を笑わせて、あの寝ている学生を注意しないで何とか起こしてやろう!」などと、学生たちから影響を受けつつ、考えて話をしている。その状況ではすでに化学反応が起きているのです。引きこもりは、コミュニケーションという関係性を拒絶している状況と言えますね。

安河内:なるほど。

(構成:山本 航、撮影:上田真緒)

※次回は11月19日(水)に掲載します。

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