「からあげ」業界、激烈なブームの「賞味期限」 ファミレスに居酒屋も参戦、業界地図の行方

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大手が空揚げに注力する背景には、顧客層の広さに加え、設備投資の軽さや、オペレーション面での簡便さなどがある。持ち帰りに向くといった特性もあり、巣ごもり需要の高まりがこの勢いをさらに加速させた。それが空前の空揚げブームとなって到来している。

すかいらーくホールディングスが展開する空揚げ店ブランド「から好し」(記者撮影)

そもそも空揚げは、外食チェーンにとっては欠かせない食材だ。洋風空揚げの代表格といえるケンタッキーフライドチキンのほか、多くのハンバーガーチェーンでは必ずチキンカツのハンバーガーを扱っている。ファミレスや居酒屋にとっても空揚げはもともと主力メニューの1つだ。

だが、今回の空揚げブームが従前の流れと違うのは、地方に根ざした文化がベースになっていること、持ち帰り専門店が主流という点にある。そもそも、持ち帰り専門の空揚げチェーンは、コロナ前までは大分県発祥企業の独壇場だった。

九州・大分から全国的に市民権を獲得

現在の空揚げ専門店の起源は、大分県宇佐(うさ)市にあった「庄助」とされる。その後、宇佐市に隣接する中津市で、1970年に「総本家 もり山」(旧森山からあげ店)が創業。この総本家もり山の空揚げは、秘伝のニンニクだれに漬け込んだ塩味で、そのおいしさや手軽な価格もあいまって、現地で大きな人気を集めた。

「総本家もり山」の人気を受け、中津市や宇佐市では長い時間をかけて、数多くの空揚げ専門店が開業した。知名度も徐々に高まり、中津市は「空揚げの聖地」を名乗るなど、独特のブランドを構築している。

現在、「もり山」を冠した専門店が東京や大阪にも続々進出しているが、こちらは「総本家もり山」とは別会社で、創業者や社長の親戚が経営する業態「元祖中津からあげ もり山」が主だ。

また中津系に続く大分県勢では、宇佐市を地盤に「とりあん」を28店舗展開するとりあん、大分県豊後大野市に本社を置き、料亭経営と同時に空揚げ専門店「ジョニーのからあげ」を64店展開するイセヤが多くの店舗を抱える有力企業となる。

とくに「元祖もり山」「とりあん」は共に2009年に東京に進出。両店が人気を集めたことで、首都圏で「中津系」「大分系」空揚げ専門店が認知され、現在に続く空揚げブームとなった。

大分勢以外の専門店チェーンとしては、大阪に本社を置き「鶏笑(とりしょう)」を展開するNISがある。2009年の創業後、FCを軸に店舗数を急拡大。現在は約250店と、実店舗を有する専門チェーンとしては国内最大の店舗数と見られる。また、愛媛県に本社を置き「からあげやカリッジュ」を展開するカリッジュも、FCを軸に全国展開を進めている。

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