「現代の闇」を予言したマルクスとケインズの慧眼 GAFA支配は「アヘン貿易の世界化」に他ならない
アヘン貿易と言えば、ある意味では、現代でも19世紀のアヘン貿易当時の収奪の構図は継続しているのではないかとも思うんです。実際、至るところで収奪の世界構造というのはそのまま残っている。
スマホは現代のアヘンである
「アヘンに代わって、いまやスマホが21世紀のアヘンだ」なんていうとパラノイアみたいに思われるかもしれませんが、いまや40ドルほどでだれもが手にすることができるスマホで、われわれはいつでも世界中と通信し、情報検索ができる。その反面、個人情報のビッグデータは集積され、分類され、不可視の構造の中で、知らず知らずのうちにGAFAの支配下に入っているわけですよね。
水野:もうアヘン漬けにされているんですね。
木村:そう、おそらく、気づかないうちにね。だから、いまや007のような諜報部員が活躍する余地はないわけですよ。われわれは専制権力に強制されることなく、パソコンやスマホを通して自分の個人情報を自ら差し出していて、たとえば血圧や血糖値といったバイタルデータまですべてが掌握されている。そうしたビッグデータが誰に、それがどのように使われるか、まったくわからない。新たな「ビッグ・ブラザー」が支配する、ジョージ・オーウェル的な21世紀版のディストピア。
19世紀の最後の年に死んだ哲学者のフリードリヒ・ニーチェは「神は死んだ」と宣告しましたが、彼は結論を急ぎ過ぎたのかもしれません。いまや、ビッグデータの「クモの巣」こそは新しい神なのですね。19世紀に死んだ神は、21世紀に復活しているのです。
水野:ビッグデータが神だとなると、ネットゲームにはまっている人たちは狂信的な信者ですね。ビッグデータ教に入信しないと、魔女狩り裁判にかけられかねませんね。
ケインズの慧眼という話をしてきましたが、マルクスの慧眼と思うのは、彼はプロレタリアートにとっては宗教がアヘンだと言っていたことです。アヘンというのはアスピリン、つまり鎮静剤だと。
プロレタリアートの日々の生活が苦しくて、毎日死にそうなんだけれども、彼らがすがるものは宗教しかない。現世は苦しくても来世ではきっと救われると思うことで、明日も何とか働ける。つまり宗教がアヘンの役割をしているんだとマルクスは言っているんですね。
それが宗教かどうかは別にして、鎮静剤的なものを何か用意しないと、苦しみからは逃れることができない。けれども、それは鎮痛剤でしかないので、根本的な治療、解決にはならないと。
木村:そうですね。グローバリゼーションの総本山に盤踞する人たちは、その場しのぎの鎮痛剤しか持ち合わせていない、という気がしてなりません。
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