保守化する「韓国の10代男子」に教師が語ること 男性教師がフェミニズムを教える意義と葛藤

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――韓国は日本に比べてジェンダー議論が活発に見えます。

ネットコミュニティの影響があると思います。実際にアンケートをしてみますと、20〜30代の男性がそれほどフェミニズムに抵抗感を持っているわけでもありませんし、みんなが、フェミニズムに反対するような、伝統的な家父長制を支持する「韓男(ハンナム)」ではありません。しかし、過激な人々の意見が過剰に取り上げられるようになってしまった。こうしたコミュニティから出てきた極端な主張にメディアが乗っかり、利用したんですね。

また、今回の大統領選挙には、保守党の若い党代表がこうした状況を煽ったことが影響を与えました。それでジェンダーの議論が消耗的、かつテレビ的な方向に進んでしまった感じがしますね。時代を逆行していると思います。

――今後チェ先生の授業はどう発展していくのでしょうか。

これから状況がさらに悪化するかもしれません。その状況によって、授業の内容が積極的になったり、消極的になったりするかもしれませんが、授業をやめたくはありません。マスコミは20代〜30代の男性の保守化を指摘していますが、私が思うには10代ほうがより深刻です。

そうした中で、ある1つの集団で1つの意見だけが突出している状況で、「それは違うのではないか」と言える学生を1人でも育てることができれば、その集団が極端な方向に行くことを止められる可能性があります。多数の意見に対して、それは違うと声を上げられる学生1人教育できればいいという方向性でこれからも続けていきたいと思います。

より多くの人を味方にする運動をしている

――これからジェンダー教育をしたい、という人に何かアドバイスはありますか。

まず、生徒が傷つくことがないように配慮するのが重要だと思います。変化は一瞬で訪れるものではありません。私も最初は非常に強い意志を持って、志を持って、「私のこの本気度を学生たちがわかってくれる」と思っていました。ただ期待が大きすぎるあまり、時に生徒を大きく傷つけたり、自分が落ち込んだりもしました。

でも変化はゆっくり訪れるもので、これまでの歴史を見てみても、弱者が徐々に人権を得る方向で進んできたと思います。誰かを憎んだり嫌悪したりするエネルギーは、愛や平和には勝てないと思います。より長い呼吸で、長い視野で共にこの道を歩んでいってほしいと思います。

私の本が日本で発売されたのは、このような声が必要だったからではないかと思います。日本の女性の人権も韓国と同じぐらい、もしくはより悪い状況にあると思います。私たちは流血革命を起こしたいというわけではなく、より多くの人を味方にする運動をしていて、この過程には男性の協力、積極的な協力も欠かせません。そのためにこれを他人の問題として捉えるのではなく、自分の家族、身内、娘、愛する妻の話だと思って、よりオープンマインド、開放された心で共にこの運動に参加してもらいたいです。

(1日目第1回は男性に不満を持つ「韓国女性たち」の容赦ない本音

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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