K-POP「強い女性アイドル」が生まれた大人の事情 「韓国最強コンテンツ」に対するもう1つの視点

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一方で、こうした女性たちにとって、あこがれの対象となるような、女性アイドルの存在も必要だと芸能事務所は考えました。いわゆる「ガールズエンパワーメント」的な存在です。

つまり、芸能事務所は韓国社会におけるヒエラルキーや女性蔑視などの対象となっている女性に対して「強い女性」のイメージを売ろうとしているのです。これもすべて、市場調査をした結果に生み出されたものです。そうした女性に触れることによって、女性たちは自分が実際にパワーを得たような感覚を得ることができるわけです。

資本主義下では状況は変わらない

ただ、これは韓国に限ったことではないでしょう。K-POPの女性アイドルは世界中の女性にも人気がありますし、『スーパーウーマン』や『ワンダーウーマン』など映画やドラマの大衆文化でも強い女性をフィーチャーしたものは多い。こうした強い女性は、実際には日々葛藤している女性にとってファンタジーのような存在で、ファンタジーは売れる、ということです。

ここでの話、つまり、ビジネスの話においては、それぞれのアイドルがいかに技術的、芸術的、キャラクター的、あるいは人間的に素晴らしいか、ということは考慮に入れていません。あくまでK-POP業界というビジネスの観点で見たとき、アイドルにとって重要なことは「稼げる」ということです。

――ジェンダーによるヒエラルキーがなくなるなど、韓国社会が「平等」になった場合、女性アイドルはどうなったものになるのでしょうか。

それに答えるのは難しい。なぜなら問題はK-POPに限ったものではないからです。資本主義においては女性、LGBTQ、移民、有色人種、身体障害者など社会的立場が弱い人が搾取されやすい構造にあります。われわれが資本主義の中で生きていく以上、大きく変わることはないのではないでしょうか。

(2日目第1回は韓国ドラマ「不安定な年下男性」多出する納得理由

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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