つまりはこの坂を登りきるためには、わが「心・技・体」のレベルをワンランクもツーランクも向上させなければならないのだ。50を過ぎた身にはどう考えても決して簡単なことではない。
というわけで、この目標が定まってからというもの、わが修行の火蓋が切って落とされたのである。まずは何よりも先人に学ぶところから。スイスイと前を登っていく若者のフォームに目を凝らし、全身の滑らかな動きをイメージに叩き込み、それを思うに任せぬ自らの肉体で実践すべく、全身の動きにこれ以上ないほど意識を集中しながら漕ぐ、漕ぐ、漕ぐ!
とはいえ、力任せでもまたダメなのだということも次第にわかってくる。肩や首の力を抜き、足も踏むというよりは回す感覚で。さらには視線も重要だ。前から車が来ると、つい恐怖のあまり車を見てしまうのだが、そうすると気持ちも体も車の方に「持って行かれて」しまって、逆にこちらからぶつかっていってしまいかねない。
なので何がやってこようが気をとられることなく、ただ真っ直ぐに自分の行くべき道だけを冷静に見続ける……いやはやここまでくると、まったくの人生修行そのものではないか。
で、このような修行を人知れず6年間積み重ねた結果、今ではほぼ100%坂を登りきることができるようにはなったのであります!
が、それでもまだ完璧とは言えない。
スムーズにスピードを落とすことなく最後まで登っていくどこの誰とも知れぬ猛者を目撃するたびに、まだまだやらねばならぬことは山ほどあると痛感せずにはいられない。
また、意地になって頑張りすぎた結果転倒したことも数回あり、登りきれぬと判断した時は余力を残して「降りる」判断も重要なのだということもわかってきた。しかしだからと言って早々に諦めてばかりでも技術向上は望めないのも事実。もうダメだと思った時からの一踏ん張りで新たな世界が開けることもあるのだ……などと考えていると誠に奥が深い。
語り始めたらキリがないのでこのくらいにしておくが、ここまで書けば、このようなくだらないことを「人生の目標」に定めるのも決して一笑に付すべきことではなく、何であれ人の一生をかけるに値することなどいくらでもあるということが少しはわかっていただけたであろうか。
で、これに味をしめた私はさらに次の目標を見定めた。
わが人生の目標その2 足の小指を再生させる
これもまあ単純な話で、私、長年のサラリーマン生活で無駄におしゃれをしまくってテクテク通勤していた影響で、ハイヒールやつま先の細い靴に押し込まれたわがかわいそうな足が「ハンマートゥ」という症状を引き起こしてしまっているのです。
両足の小指がダンゴムシみたいに丸まって、手でぎゅうぎゅうの伸ばそうとしても決して真っ直ぐにならない。しかもその影響でひどい巻き爪になり、ほぼ爪が「見当たらない」状態にまで陥ってしまった。
なので会社を辞めたことを機に、このかわいそうな指たちを元の姿に戻してあげることはできないだろうかという、人道的(指道的?)一大プロジェクトの開始を思いついたのであった。
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