猫は「ゴルゴ13以上のスナイパー」すごすぎる能力 優れた狩り能力を実現させるすごい身体の構造

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この「白筋」という強靭な筋肉に加えて、ねこが驚異的な瞬発力を生み出すことのできる、もう1つの要因は、柔らかく、そしてしなやかな身体です。とくに背骨の関節はとても柔らかく、反り返ってU字のように背骨を曲げて寝ているかと思えば、起きてあくびをするときなど、今度は逆に背骨をアーチ状に曲げます。

わたしたち人間のように、柔軟体操やヨガで苦労して背骨を前後に曲げるのではなく、ねこは日常の普通の動作で、背骨を背と腹の両方向に、自由自在に曲げながら生活しています。この背骨の柔軟性のおかげで狩りのときに、瞬発力を生み出すことができます。

地上最速のスプリンターであるチーターは、獲物を追いかけるときに背骨を背側と腹側に、水泳のバタフライのように繰り返し曲げることによって、ストライドを7〜8mと大きく伸ばし、最高速度時速100kmを超える走りを可能にしています。このことから、チーターは背骨で走るともいわれています。ほかのネコ科動物も、チーターほどではありませんが、背骨の柔軟性を上手に使うことによって、後肢の脚力を最大限に生かした驚異的な瞬発力を生み出します。

ねこは1.5m跳ぶ

ねこが走るときの最高速度は時速50km程度といわれています。チーターの最高速度の半分程度ではありますが、チーターの体長の半分にも満たないねこが、そのような速度で走れるのは、すごいことです。人間の100m走の世界最速記録は、ウサイン・ボルトによる9秒58(2016年2月時点)ですから、時速に換算すると、約37kmでしょうか。ねこと比べて随分と身体の大きな人間は、走る速さでもとてもねこに及ぶことができません。

もちろん、最高速を維持できるのはわずか数秒とはいわれていますが、それでも、このような驚くべき身体能力を持った動物と、わたしたちは同じ家や街のなかで暮らしています。こうした事実を知ると、ねこを見る目がこれまでと少し変わってきませんか?

ねこは、身体の高さの5倍くらいの高さ(約1.5m)の場所に、助走なしで飛び乗ることができます。人間にあてはめてみると、ねこのように四つんばいになった状態での人間の体高を60cm程度とすれば、助走なしで3mの高さまで飛び上がることになります。どんなアスリートでも、これは不可能です。

猫のツメの構造(出所:『ねこはすごい』)

さらにねこは、手足のツメ(図)を使うことによって、人間の身長よりもはるかに高い塀などにも、瞬時に登ることができます。街に棲むノラねこが、危険が迫ったときなどに軽々と、高い塀を越えていくのをご覧になったことがある方も多いと思います。これも強靭な後肢の筋肉と、むちのようにしなやかな背骨、そして手足のツメの絶妙なコンビネーションがなせる業です。

関節がとても柔らかいねこの背骨は、180度以上、身体をよじることもできます。人間でいえば、正面を向きながら、つま先は完全に後ろ向きのような姿勢をとることが、楽々と可能です。ねこが高いところから背中から落ちたときに、瞬時に体勢をたてなおして、脚から地面に着地できるのは、柔軟性に富んだ背骨をよじって身体の上下を素早く変えることができるからです。狩りにおいても、逃げ惑う獲物に、アクロバティックな姿勢で組みつくことができるのも、この背骨の柔軟性のおかげです。

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