女性たちが語る「日韓エンタメ」の決定的な違い 日本のドラマや音楽にはない要素は何なのか

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ドラマで社会背景が描かれることについて山下教授は、「韓国の歴史は前近代から受難の歴史だからです。豊臣秀吉の朝鮮出兵、日本による植民地化、朝鮮戦争。何度も侵略される中で、何とかやってきた国ですから」、と明快に説明する。社会を常に視野に入れようとする中に、女性の自立も入っているのだ。

スタッフの女性比率も高い。「脚本家は約8割が女性です。監督は圧倒的に男性だったけれど、2007年の『コーヒープリンス1号店』から女性演出家が出てきました」(山下教授)。

K-POPアイドルについても、「1990年代にアメリカで勉強し、最初から世界を視野に入れる人たちがアイドルグループを育てるようになりました」と山下教授。つまり、世界では、自立した女性のイメージが売れる傾向が強いのだ。そして、日本の女性ファンも自立したアイドルに憧れる。

日本のドラマに女性の視点は入っているか

日本では、女性が留飲を下げられるドラマのセリフや展開はまだ限られている。テレビの世界は圧倒的に男性社会で、女性のキャラクターは強さより優しさが強調され、強そうに見えたキャラクターが実は弱いなど、男性に都合よく描かれる傾向が強い。

ドラマ離れや若者のテレビ離れが指摘されて久しいが、それはもしかすると、テレビの世界が若い世代や女性の感覚とズレているからではないか。それは決定権を持つ女性が少ないからかもしれないし、スポンサーが男性中心の企業だからかもしれない。

韓国ドラマ界が初めて参加した北京女性会議をきっかけに、ドラマで両性平等を描けているかどうか気を配るようになった、という事実はショックでもある。日本は1975年開催の第1回世界女性会議から参加しているのに、抜け穴だらけの男女雇用機会均等法ほかごく一部しか、両性平等施策は講じられていない。

経済では中国に抜かれ、エンタメなどの文化は韓国に置いていかれる。いち早く高度経済成長を成し遂げた日本は、この数十年の停滞で、すっかり出遅れてしまったのかもしれない。

(2日目第3回はK-POP「強い女性アイドル」が生まれた大人の事情

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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