とにかく勝ちにこだわる人の視野が狭くなる理由 セレンディピティに恵まれる人の人生の捉え方
それから学生たち(スタンドのオーナーの役割を担う者と、会社側の代表の役割を担う両方)に、それぞれの立場を離れ、オープンな気持ちで、根底にある本当のニーズや関心を理解してみてほしい、と伝える。
一見解が見えないところに解を見つける
石油会社の代表がスタンドのオーナーに、なぜ58万ドルが必要なのかと聞いてみたとしよう。すると、会話はたいてい思いがけない方向に展開していく。
スタンドのオーナーは、引退したらパートナーとセーリングにいくのが自分の夢で、それを叶えるためにそれだけの金額が必要だと思う、と答える。
すると石油会社側の学生はこう言い出す。
「そんなことだとは思わなかった。それなら、ヨットの帆にわれわれの会社の名前を書くというのはどうだい。実はそんなスポンサー活動を増やしたいと思っていたんだ。代わりに、セーリングの旅に必要なガソリンを提供してあげるよ」
こうして、石油会社の買収価格を抑えつつ、オーナーにとっても魅力的な予想外のアイデアが、他にも出てくる。
お互いの主張の根底にあったニーズを表に出してみると、解決のための思いがけない方法が明らかになるのだ。
もともと「ウィン・ウィン」の精神があり、互いにメリットのある落としどころが見つかるかもしれないと思っている学生は、このようなアイデアを直感的に思いつく。
一方「勝つか負けるか」という発想からスタートする学生は、両方にとってプラスの結果を得るために「パイそのものを大きくする」方法を思いつくのに時間がかかることが多い。
ウィン・ウィンタイプの学生は、勝つか負けるかタイプの学生より、信頼を構築し、お互いの本当のニーズや優先事項に関する情報を交換するのに長けている。
ここには交渉能力を高めるためのヒントが詰まっているが、注目すべきは予想外の要因が「目に入らない」のは、そもそもその存在自体に気づいていないためである、という事実だ。
スタンドのオーナーが求めていた不自然な(そして割高な)売却価格(それを所与のものとして受け止めてしまう人も多い)によって、その背後にある本当のニーズが見えなくなっていた。本当のニーズが明確になったとたん、はるかに魅力的な選択肢が現れた。
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