あなたの上司は、あなたから見れば、「バリキャリ」そのもの。「家のことはなんとかなる。仕事が優先」というふうに見えているのですよね?
ああ、残念でたまらない……。
その上司の方が聞いたら、言葉を失うことでしょうねぇ。自分の言葉が、あなたが退職を考えるほどにまでに、追い詰めてしまっていたなんて。そして、きっと過去の私もそうだったに違いありません。相手がどういう気持ちで聞いているか、理解しようとせずにアドバイスしていたことは、その方ともども謝ります。一歩間違えばパワハラですしね。
世代間でギャップがあるのは、ある意味当然
でもね、少し視点を変えて考えてみてほしい。日本の「働く女性」の歴史は、まだとても浅いのです。男女雇用機会均等法が制定されて28年、育児休業法が制定されて22年しか経っていません。また、4年生大学への進学率が短大進学率を超えてから20年も経っていない。「女性が働く」ことが大きく変化してきたこの短い歴史の中で、そのときどきの時代を乗り越えて働いてきた女性たちが、それぞれ、まだばっちり現役、ということなわけです。
世代間ギャップを針小棒大にくくったり、タイプ別に分類したりすることは、あまり意味のあることだと思いませんが、めちゃくちゃ多様な種類の女性たちが働いているのが今の日本の社会だ、ということは言えると思います。まさに、「るつぼ」です。
結婚したら退職するのが慣例という中、出産時には育休もなく、家庭のことも夫に頼らずほぼひとりで頑張りながら働き続けてきた人。「一般職」として入社したのに、「一般職」が企業から消滅するに際して「総合職」に転換させられ、戸惑い続けている人。初期の「女性総合職」として、いわれなき差別を受けたり女性同士の人間関係に悩みながらも、歯を食いしばって競争を勝ち抜いてきた人。実はこういう女性たちが40代、50代にはいっぱいいます。
また、男女差なく教育され、就活してきたのに、女性だけが抱えるライフイベントを控えて、キャリアロスがたまらなく不安になる人。あなたのように、自分の軸をしっかり持って生き方と働き方を模索しているのに、「バリキャリ」の価値観を押し付けられて不快に思っている人も、若い世代にはたくさんいることでしょう。
日本の女性の間で、これだけの価値観が混在している状態は、これまでにないことなのかもしれません。でも、それこそが「ダイバーシティマネジメント」なのだと思うのです。
多様な時代背景を背負った多様な価値観を持つ女性たちが、それぞれ「個」として生かされるように、配置・育成し、それぞれの活躍を支援していくこと。そのベースがないままに、目玉のような人事制度を導入したり、女性活用なんとかランキングに食い込んで喜んでいたりしていても、当の女性たちは白けた気分のままなのではないでしょうか。「自分をちゃんと応援してくれている!」とは思えないですものね。
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