「堂薗さんみたいには働きたくない」に衝撃
私自身はこれまで、延べ数百人の女性と面談やインタビューを実施してきましたが、彼女たちの価値観は本当に多様だと実感しています。そして、それぞれの人たちにとって、それぞれが正解であるのだなと強く感じます。
ワーママ営業組織をマネジメントしていたとき、私もあなたの上司と同じように、「彼女たちは私と同じ気持ちに違いない」と思い込んでいた時期があります。だから、さんざん「頑張って働く」ためのアドバイスをしていて、「堂薗さんみたいには働きたくない」とはっきりメンバーに言われたときは、衝撃を受けました。
「人生で何度も経験できない育児を、自分の手でちゃんとやりたい。家計のために働いているのです。本音は保育園にだって預けたくない。私の価値観は仕事より育児にある。使える制度がある間は無理なく働きたいと思っています」と、彼女はまっすぐに私に伝えてくれたのです。直接のメンバーではなかったけれど、私は自分のピント外れに愕然として、思わず謝っていました。自分とは価値観が違うけれど、彼女は何も間違っていない。
でも、「これまでと違ったアドバイスができるようにする」と約束した後、私はとてももやもやしてしまいました。どこかで彼女が「仲間」でないと感じ、どこかで彼女から否定されたような気持ちになり、急に彼女との距離を感じたからです。きっと彼女に伝わってしまったことでしょう。私自身の人間としての至らなさを痛感した思い出です。
女同士で対立しても、損なだけ
私は、自分より年齢が上の女性の働いてきた歴史を聞くのがとても好きです。それぞれにドラマがあって、いろいろな困難を乗り越えてきた力強さがあって、「私なんて、力がない分、無我夢中でやってきただけなのよ~」と笑うしなやかさもあって、思わず涙ぐみそうになることだってあります。彼女たちのドラマに引き込まれて、リスペクトの気持ちが芽生えるから、なのでしょうね。
あなたの上司の生き方や考え方も、彼女にとっては正解なのです。自分の選んできた働き方の知恵をあなたに授けたいと考えているのだけれど、あなたの考え方を理解しないで一方的に伝えてしまっているのですね。母親が娘に世話を焼きすぎたり、余計な口出しをしてしまうのと似ているのかもしれません。「うるさいなー」と思う気持ちもよくわかります。「あなたみたいにはなりたくないのよ」と、言いたくなってしまうこともあるかもしれませんね。
でも、ベテラン世代vs.若手世代、ワーママvs.独身女性、バリキャリvs.ゆるキャリ、のように、女性同士が対立構造になって、勝った、負けた、とやったところで、女性に得なことはまったくありません。
「オンナってすぐオンナ同士でもめるよなぁ」とオトコに馬鹿にされるだけです。ましてや、管理職ワーママvs.部下ワーママ、育休3年vs.育休1年未満、フルタイムvs.時短、と細かな対立構造に足を突っ込めば突っ込むほど、私たちの視野は狭くなり、多くのTIPSを受け取ることができなくなってしまいます。
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