最近相次いでいる数々のタイアップには、新しい世界に備えようとする切迫感と同時に、その複雑さが示されている。「存亡に関わる問題」と、トヨタのCEO豊田章男は言う。トヨタは自動運転の研究でマサチューセッツ工科大学およびスタンフォード大学と10億ドルのパートナーシップを結び、さらにウーバーにも出資する。グーグルは自動運転車の開発部門を分社化して、アルファベットの子会社とし、ウェイモを設立した。そのウェイモはリフトと提携して、アリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーサービスを立ち上げている。
フォードは一連の買収に加え、10億ドルを投じて、AIの開発企業アルゴAIを買収した。アップルは中国のディディに10億ドル出資し、アウディと、ダイムラー、BMWの3社はノキアから地図情報事業を31億ドルで取得している。GMはリフトに5億ドル出資したほか、起業してからわずか3年ほどのスタートアップ、クルーズ・オートメーションを10億ドルと報じられる金額で買収した。
テクノロジーだけでなく投資の規模も、提携を推し進める理由になっている。フォードは自動運転車や電気自動車の開発でフォルクスワーゲンと提携した。「同じ認識にたどり着いた」とビル・フォードは言う。「巨大な世界に我々は入ろうとしています。市場の潜在的な規模はまさに巨大です。ですが、必要とされる資金の潜在的な規模もまた巨大です。どんなにバランスシートの規模が大きくても、1社では到底手がけられません」。
自動運転車に休憩は必要ない
自動運転車とライドヘイリングの融合を図る大きな理由の1つは、経済性だ。ライドヘイリングでは、ドライバーの人件費に一番お金がかかる。ドライバーを省けば、移動サービスの提供コストを下げられる。もちろん、「自家用車持ち込み」のドライバーへの支払いをなくしても、それによって得られるコストの削減効果は、車を購入しなくてはならないことによって、ある程度相殺されるだろう。それでも自動運転車には、ほぼ一日中、昼も夜も、サービスを提供できるという大きなメリットがある。自動運転車は休憩したり、睡眠を取ったりする必要がない。
ここで生きてくるのが電気自動車の強みだ。電気自動車は車両の価格ではガソリン車より高いが、1マイルの走行にかかる費用はガソリンより安い(内燃機関の燃費が大幅に改善されない限りは)。したがって、たくさんの車をほとんど休みなく走らせ続けるというときには、電気自動車の魅力が増す。加えて、再充電の問題も、大規模充電ステーションの設置で解決できる。
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